2010.12.23
Glory 邦題:グローリー
南北戦争を舞台に、北軍で結成された黒人だけの部隊の指揮官と兵士たちの勇姿を描いた戦争ドラマ。アカデミー賞助演男優・撮影賞・録音賞受賞作品。
1860年暮れにリンカーンが第16代合衆国大統領に当選。それに反対して南部7州が連邦を脱退し、翌年4月には「南北戦争」が勃発します。
ボストンの実家に戻ってきた北軍指揮官のロバート・ショー(マシュー・ブロデリック)は、パーティの席上で知事(アラン・ノース)から黒人だけで組織される第54連隊の指揮官を勧められ、引き受けることにします。
そして彼の友人で白人士官のキャボット・フォーブス(ケイリー・エルウェス)や幼なじみの黒人シアーレス(アンドレ・ブラウアー)も部隊に志願します。
北部の黒人だけでなく、南部から逃げてきた黒人奴隷たちも入隊を志願します。が志願兵の中には、食事と雨露をしのぐことが目的のものも少なくありませんでした。そして翌日から、厳しい訓練が始まります。
北軍とはいっても人種差別は根強く、補給物資も滞り、兵士たちは肉体労働に駆り出されるだけで、戦闘には参加できません。
厳しい訓練が続く中、ショーは、リーダー格のローリング(モーガン・フリーマン)や白人を憎むトリップ(デンゼル・ワシントン)、射撃の名手シャーツ(ジミー・ケネディ)たちとの交流を通して、人種の壁を越え信頼関係を築いてゆきます。
サウスカロライナに移動した54連隊は、間もなく実戦に参加することになります。
第44代大統領にオバマが就任したのが2009年。キング牧師が訴えたのが40年前の1969年代。そして黒人解放のもととなった奴隷解放宣言がリンカーンによって出されたのはその100年も前のことでした。
私たちも黒人を奴隷として扱う南軍と、解放を目指す北軍の戦い、そして自由の御旗で戦った北軍が勝利したというのが南北戦争という刷り込みを受けていますが、それはリンカーンのイデオロギーでしかなかったから、その後1世紀以上、黒人たちはその人権を認められることはありませんでした。
それでもこの事実の始まりとなった南北戦争。この頃の南部の様子は、「風と共に去りぬ」を見ればわかります。
で、黒人たちを鍛え上げ、ただの奴隷を立派な兵士に仕立て上げ、彼らと共に勇ましく戦った白人大佐はマシュー・ブロデリック。個人的にはどうも「フェリスはある朝突然に」のイメージが強くて、シリアスな演技をしていてもどうしても笑ってしまう。という訳でもないのでしょうが、アカデミー賞は脇役のデンゼル・ワシントンが助演男優賞を受賞します。
ぶっちゃけ、ブロデリックは芝居下手だし・・・。といっても、デンゼル・ワシントン、それほど役にはまりきってる感じでもなく、「ええ?これでアカデミー?」という程度の演技なのですが・・・
それにしても、この頃の戦いって、洋服こそ着ているけど日本の戦国時代の戦いとなんら変わらない。全員銃は持っていますが、並んで揃って突撃という、なんとも原始的な戦い。いわゆる近代戦になるのは20世紀に入ってから、それも第二次世界大戦からなのですね。
そして、決死とか死を覚悟でというようなシチュエーションに対しては、とてつもなくナーバスになってしまうハリウッドのアキレス腱を見ることができます。ショーが海を見るシーンの、長いこと、長いこと!
結局、黒人たちは自らのためでもなく、指揮官のためでも北軍のためでもなく、人間として戦うと宣言するわけですが、それは奴隷と言う動物並みの扱いから、人間として認められたという意味で使用されていて、黒人の人権とかそういう意識はもちろん生まれもしていない。
そういう今よりももっと原初的で荒削りで、ストレートな一人の人間のしての誇りのような部分を描ききれば、作品賞も夢ではなかったかも?
モーガン・フリーマン、相変わらず渋くこなしています。音楽は、泣く子も黙るジェームズ・ホーナー。最近作だと「アバター」やってましたね!
世界史、それも19世紀のアメリカの歴史のお勉強に。マシュー・ブロデリックが嫌いじゃない人に。
出演:マシュー・ブロデリック,デンゼル・ワシントン,ケアリー・エルウィス,モーガン・フリーマン,ジミー・ケネディ
監督:エドワード・ズウィック 1989年
音楽:ジェームズ・ホーナー
BOSS的には・・・★★★☆☆
もっとムービー・アーカイブスはこちら >>> 「ムービー・インデックス」