2011.01.15
The Verdict 邦題:評決
医療ミスによる事故をめぐる裁判を通して、自らの生きる道を探る初老の弁護士の姿を描いた社会派ドラマ。バリー・リードの同名ベストセラー小説の映画化作品。
ボストンで弁護士をしているフランク・ギャルヴィン(ポール・ニューマン)。しかし仕事のない彼は、新聞の死亡欄を調べては葬儀に潜りこみ名刺を配ってはつまみ出されの毎日。昼間から酒をあおり、文無しの荒れた日々を過ごしていました。
かつてフランクは一流大学の法科を主席で卒業し、権威ある大手法律事務所に勤務。ボスの信頼を得てその娘と結婚するというエリート・コースを歩んでいました。しかし自分が担当した裁判で、敗訴を案じたボスが裏で陪審員を買収。それを知って事務所から独立した彼は逆に訴えられて有罪判決を受け、妻も彼のもとを去ったのでした。
フランクのよき理解者である老弁護士ミッキー(ジャック・ウォーデン)も、最近の荒れようには手を焼いていました。そのミッキーが、とある訴訟事件を持ってきます。出産のためキリスト系の名の知れた大病院に入院した女性が、麻酔処理のミスにより子供を失い、自らも植物人間になってしまった。彼女の姉夫婦が、今も妹の入院している聖キャサリン病院と担当の医師2人を訴えたのです。
聖キャサリン病院に勤務する別の医師から、完全な医療ミスだったと聞かされたフランク。勝算を得た彼でしたが、示談で手数料さえ入ればいいと思っていました。
しかし、植物人間となった被害者を目の当たりにし、「人としての正義」に目覚めます。そして21万ドルもの示談金を病院側から提示されますがこれを拒否。舞台は法廷へと移ることになります。
ある夜、行きつけのバーで謎めいた女性ローラ(シャーロット・ランプリング)と出会い、愛し合うようになります。
開廷の前日、証言を得ていた同僚医師は、被告側の大手弁護士事務所のボスであるコンキャノン(ジェームズ・メイスン)の画策により音信不通となってしまいます。
何といっても、かつて正義を目指しながら身内に裏切られ、自暴自棄となってしまったフランクが正義に目覚めますが、前途多難。いや裁判自体は敗訴確実の状態に追い込まれる。それでもなんとか自分を奮い立たせて、最後まで戦う初老の弁護士を演じたポール・ニューマンの名演です。
で、なんと愛人役にはあの「ブガッティ・ロワイヤルの女」のシャーロット・ランプリング。あの映画以外では始めて見たのですが、微妙な役柄に対してはたしてベストなキャスティングだったのかどうか・・・もちろん「ブガッティ」はぴったんこ、ぴったんこだったんですが・・・。
エンディングといいますか、裁判の結果はまあ見てのお楽しみということにしておきますが、犯罪を明確に裏付ける証拠を正式に提出できず、いよいよ窮地にたったフランクの原告側の最終弁論は、陪審員たちの良心にひたすら訴えるもの。
普通ここは、観ているものをジンジンさせる名言がなされるのですが、個人的な感想としてはそうでもない。一般的には評価の高い本作ではありますが、時代が違うのか、あるいはアメリカと日本というお国柄の違いなのか、どうもあまりピンとこない。
ポール・ニューマンは名演なのですが、違ったキャストで違った脚本で、さらに一ひねり二ひねりすれば、素晴らしい作品となったような気もしなくはありません。
もっと、「絵に描いた正義」でも良かったのかもしれませんね。
出演:ポール・ニューマン,シャーロット・ランプリング,ジャック・ウォーデン,ジェームズ・メイソン,ミロ・オシー,エドワード・ビンズ,ジュリー・ボヴァッソ
監督:シドニー・ルメット 1982年
BOSS的には・・・★★★☆☆
もっとムービー・アーカイブスはこちら >>> 「ムービー・インデックス」