2011.02.12
「グスタフ・マーラー、没後100年」
私の最も好きな、そして最も尊敬してやまぬ作曲家、グスタフ・マーラーがこの世を去ってちょうど100年になります。
1860年7月7日、当時のオーストリア領ボヘミア・イーグラウ(現チェコのイフラヴァ)近郊のカリシュト村で、酒造業を営むユダヤ人一家に生まれた彼は、ユダヤ人であることを生涯背負い続けます。
「私はどこに行っても歓迎されない。「オーストリアにおけるボヘミア人」、「ドイツにおけるオーストリア人」、そして「世界におけるユダヤ人」だから。」
しかしそんな凝固化された世界観を持ちながらも、彼は生涯に11曲の素晴らしい交響曲を残します。
かのモーツァルトもベートーベンも、交響曲第1番とか第2番とか言えば、みなさんはピンと来ないはず。そんな天才でも初期の作品はそれなりのものでした。しかし、マーラーの1番はそうではない。
同時代の一方の雄、ブラームスの1番も同様に素晴らしい作品です。しかし彼は、4曲の交響曲しか世に残してはいません。
そして彼の音楽の特徴のひとつに、絶対音楽の構築と言った神の世界の創造ではなく、自らが生きる自然と人間生活のカリカチャーのようなものを目指していたような気がする。もっと言えば、世界に産み落とされた自分自身のカリカチャーとして、その生き様を譜面に表現したのではないかと思います。
しかしそれは、たとえばヴィヴァルディの四季にあるような、美しさの上澄みのような音楽では決してありません。
聞き手である私たちの精神状態によっては、さらに混沌と混迷の中に突き落とされてしまう危険をはらんでいます。
そういう聞き手の「感情移入と客観視の微妙なバランス」をとることさえも、彼は目論んでいたのかもしれない。
そんな推理作家のような、ひねくれ者で完全主義者で、愛に飢えていた彼が、私は大好きです。
1911年5月18日、敗血症によりウィーンにてこの世を去ります。享年51歳。
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