BOSS's Column

エジプトのナイル河を巡る豪華遊覧船内で起きた連続殺人事件に、名探偵ポアロが挑むミステリー。原作は、アガサ・クリスティの「ナイルに死す」。前作「オリエント急行殺人事件」とはポアロのキャスティングが異なります。

莫大な遺産を相続した美人のアメリカ人リネット(ロイス・チャイルズ)は、親友のジャクリーン(ミア・ファロー)から失業中の婚約者サイモン(サイモン・マッコーキンデール)を助けて欲しいと相談を受けます。

しかしジャクリーンの意に反して、二人はまもなく婚約を発表。ハネムーンにとエジプトに向かいます。しかしそこに現れたのは、裏切られたジャクリーン。しつこく付きまとう彼女をまいて、二人はナイル川を巡る豪華遊覧船カルナーク号に乗り込みます。

そこには休暇中の名探偵ポアロ（ピーター・ユスチノフ）と彼の旧友レイス大佐(デイヴィッド・ニーヴン)が乗り込みます。

そして彼ら以外の乗船客と言うのが、リネットの叔父で弁護士のアンドリュー(ジョージ・ケネディ)、彼女を自作の小説のモデルにして名誉既存で訴えられている作家のサロメ(アンジェラ・ランズベリー)、その娘でリネットに劣等感をもつロザリー(オリヴィア・ハッセー)、リネットの真珠のネックレスに目をつけているバン・スカイラー(ベティ・デイヴィス)、リネットにいかさま師呼ばわりされた医師ベスナー(ジャック・ウォーデン)、リネットに結婚の邪魔をされたメイドのルイーズ(ジェーン・バーキン)、父親がリネットの祖父に破産させられた過去を持つ看護婦のミス・バウアーズ(マギー・スミス)、ブルジョア階級を軽蔑している学生ファーガスソ(ジョン・フィンチ)などなど、すべてがリネットに殺意を抱くものばかり。

そしてまいたはずのジャクリーンもその船に乗船していました。そして遂にある夜、ジャクリーンがサイモンの足を銃で撃つ事件が起こります。そして翌朝、リネットが死体で発見されます。

クリスティ原作の映画化第２段。前作もポアロものでしたが、本作はアルバート・フィニーではなくピーター・ユスティノフ。前作があまりにエキセントリックに振りすぎたからた、今回のポアロは逆にユーモアたっぷりの演出です。

それにしても、ジャクリーンのストーカー度には度肝を抜かれます。これでもかと言わんばかりのしつこさ。ところが状況が事件へと発展すると、最も疑わしい彼女には完全なアリバイが存在する。

最後の２０分、ポアロが全員を集めての謎解きになるわけですが、ここでファイナル・サプライズがあります。それは、前段のフリが功を奏して、なかなかリアルにサプライズ。原作の謎解きの構成がしっかりしているからですね。途中でちゃんと我々にもヒントを与えてくれてますし・・・。

ミア・ファローは、７２年の「フォロー・ミー」で、幼い私のアイドルになった女優さん。でも、ジャクリーンは怖い・・・。「銀幕のファースト・レディ」ベティ・デイヴィス、いいですねぇ～。アンジェラ・ランズベリーは、次作で「ミス・マープル」TVシリーズ「ジェシカおばさん」を演じることになります。これも何かの縁？(^_^;)オリヴィア・ハッセー、若くて初々しいです・・・。

オリエント急行も同じですが、こういう何らかの閉鎖環境で行われる作品をミステリ用語で「クローズド・サークル」と言います。そこに登場するすべての人間に殺意があると言う構成は、いわばミステリの古典的な手法のひとつ。クローズド・サークルのもつ緊張感・閉塞感をいかに伝えるかが監督の腕の見せ所となります。

本作は、「タワーリング・インフェルノ」のジョン・ギラーミン。エジプトの遺跡を背景にした映像や船内のカット、アングルはさすがです。最後にポアロに「オリエント急行殺人事件」と言わせるところなんか、憎いなぁ～。音楽は、あのニーノ・ロータ。

海外ミステリの必須条件であるファイナル・サプライズを堪能でき、数千年の歴史とその前で繰り広げられる醜い人の争いを堪能できる名作です。

ちなみに、アガサ・クリスティ原作の映画化作品リストは以下のとおり。

「オリエント急行殺人事件」（1975年）原作：オリエント急行の殺人
「ナイル殺人事件」（1978年）原作：ナイルに死す
「クリスタル殺人事件」（1981年）原作：鏡は横にひび割れて
「地中海殺人事件」（1982年）原作：白昼の悪魔
「ドーバー海峡殺人事件」（1984年）原作：無実はさいなむ
「ゼロ時間の謎」（2007年）原作：ゼロ時間へ

出演：ピーター・ユスティノフ,ジェーン・バーキン,ロイス・チャイルズ,ベティ・デイヴィス,ミア・ファロー,ジョン・フィンチ,ジョージ・ケネディ,アンジェラ・ランズベリー,サイモン・マッコーキンデル,デイヴィッド・ニーヴン,マギー・スミス

監督：ジョン・ギラーミン　1978年

音楽     ニーノ・ロータ

BOSS的には・・・★★★☆☆

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