2011.02.05
Heaven 邦題:ヘブン
誤爆テロで犯罪者となった女教師と、青年刑務官の運命的な出会いを描いたラブ・ストーリー。「ふたりのベロニカ」「トリコロール・シリーズ」のポーランド人監督クシシュトフ・キェシロフスキの遺稿をドイツ人監督トム・ティクヴァが映画化。「天国」「地獄」「煉獄」3部作の「天国」編です。
ミラノに次ぐイタリア第2の工業都市トリノ。29歳になる英語教師のフィリッパ(ケイト・ブランシェット)は、夫や生徒たちを死に追いやった表向きは企業の経営者であり麻薬の密売人であるヴェンディーチェ(ステファノ・サントスパーゴ)を殺害するため、高層ビルの事務所に爆弾を仕掛けますが、計画は失敗。子供を含む罪のない4人の市民を犠牲にしてしまいます。
逮捕され、尋問中にその事実を知らされた彼女は、罪悪感で失神してしまいます。その時、彼女の手をとった若い刑務官のフィリポ(ジョヴァンニ・リビージ)は、彼女に恋をしてしまいます。
政治的テロリストに一員だと信じて疑わない憲兵隊の厳しい取調べを見かねたフィリポは彼女を逃がす計画を立てます。
脱獄後、密売人を射殺したフィリッパとフィリポは、トスカーナ地方へを向かいます。美しい自然の中で、本来の人間らしさを取り戻し、お互いの思いを知る二人。しかし警察の捜査の網が間近に迫っていました。
まあ、相手がいくら悪の権化とはいえ、主婦で教師の一女性が、事務所ごと爆弾で吹っ飛ばそうと言う発想が、そもそも現実離れしているといえば現実離れしているのですが、そういう徹底的かつ自爆テロとは真逆のリモート殺人により目的を達成するどころか、法的にもまた心の掟からも犯罪者となってしまいます。地獄行き決定です。
そこに現れた天使が、いまだおねしょをしてしまう幼い刑務官。しかしその幼い手により彼女は「煉獄」から救い出され、目的を果たし、そして二人で大自然の中に解き放たれます。
主人公のフィリッパを演じるケイト・ブランシェット。2度にわたる「エリザベス1世」役に代表される、細くしかし強い線がピンと張られたような演技。そんな彼女の存在感が、ただのB級犯罪映画にはない求心力をこの作品に与えています。
個人的にはフィリポの父親の息子に対する言動に、最もあるべき人間らしさ、人間臭さを感じました。
正義とは悪とは、生まれることとは、生きることとは、死ぬこことは・・・。ハリウッド物でもフレンチでもないタッチと映像の中で、皆さんも一緒に考えてみてください。
出演:ケイト・ブランシェット,ジョヴァンニ・リビシ,レモ・ジローネ,ステファニア・ロッカ,アレッサンドロ・スペルドゥーティ,マッティア・スブラジア,ステファノ・サントスパーゴ
監督: トム・ティクヴァ 2002年
BOSS的には・・・★★★☆☆
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