2011.02.23
Hostsonaten 邦題:秋のソナタ
世界的な演奏家の母と普通の娘の確執を描いたスウェーデン映画。監督がイングマール・ベルイマンで主演女優がイングリッド・バーグマンという、ちょっとややこしい作品。
ノルウェー北部のフィヨルドに面した小さな街。この土地の牧師館で暮らす夫で牧師のヴィクトール(ハルヴァール・ビョルク)と歳の離れた妻のエヴァ(リヴ・ウルマン)は、静かで平和な日々を送っていました。
ある日、エヴァは世界的なピアニストである母のシャルロッテ(イングリッド・バーグマン)に牧師館に招く手紙を書きます。二人は7年ぶりの対面でした。
実際は、エヴァは複雑な心境でした。それは、エヴァの妹で退行性脳性麻痺を病んでいるヘレナ(レナ・ニーマン)も館に呼んでいたからで、母と再会させることに不安を隠せませんでした。
到着早々、そのことを知らされたシャルロッテは急に苛立ちの表情を見せます。そしてお互いに硬い表情のままの再会。
夕食後、エヴァはショパンのプレリュードを母に弾いて聴かせますが、もちろん母とは雲泥の差。エヴァの演奏のあと、ピアノの前に座った母の演奏を聴きながら、エヴァの心の中には、幼い頃から我慢を強いられ抑圧されたことや渇望しながらも一切注がれることのなかった母の愛情を思い起こします。
夜中に悪夢で目覚めたシャルロッテは、眠れずリビングへ。心配して起きてきたエヴァでしたが、ワインで酔った彼女は、それまで鬱積した不満を母にぶつけてしまいます。
周りの母娘の方々を見ても、親子と言うよりは姉妹のような人たちばかりで、とても仲がいい人たちばかりです。しかし母親がシャルロッテのような世界に名だたる芸術家で、海外を飛び回って家を空けることが多く、また芸術家にありがちな独創的=独善的な態度やとんでもないストレスと戦う必要がある場合、息子よりも娘との関係の方が難しいような気もします。
そういう関係を洗いざらいぶちまけあう女性二人の2日間ほどのやりとりの物語です。二人の会話を聞いていると、「男」ってシャルロッテに近いかな?と思ったりするんだけど、ここでいう母親ではないわけで、そんなことはこの物語には一切関係ない、地球の反対側のお話になります。
結局、シャルロッテ自身も母からの愛を知らないままに育ち、そして娘であるエヴァやヘレナに注ぐべき愛情を知らない。ヘレナには「死んでくれた方がいい」とまで言います。
個人的には、ねちねち迫るエヴェはたまらないのですが、愛を知らないからこそ母親にも愛を持って接することが出来ないのだとすれば、二人ともが悲劇のヒロインなわけです。
ハリウッド映画などでしたら、そういう過去を乗り越えて、「血」はまた新たな「愛の再生」をすることが出来る的な、ハッピーエンドを迎えるのですが、こいつはスウェーデンとはいえヨーロッパ映画です。とても邦題「秋のソナタ」みたいな美しいエンディングではありません。
それにしても、女性とは複雑な生き物なのですね・・・。
仲のいい母娘の方々に。男性にはあえてお勧めはいたしませんが、「サガ」が違えば人種が違うと言う再認識が必要な男性にはお勧めします。
出演:イングリッド・バーグマン,リヴ・ウルマン,レナ・ニーマン,ハルヴァール・ビョルク
監督 イングマール・ベルイマン 1978年
BOSS的には・・・★★☆☆☆
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