2011.02.21
METROPOLIS 邦題:メトロポリス
日本では大正末期の1926年に、当時のワイマール共和国(現ドイツ)で製作された、モノクロ・サイレントのSF映画。
2026年。摩天楼がそびえたつ未来都市メトロポリス。高度な文明によって平和と秩序が保たれていましたが、実は住人は地上に住む知的指導者階層と地下に住む労働者階級に完全に2分されており、地下では過酷な労働の日々が続いていました。
シティの支配者の息子フレーダー(グスタフ・フレーリッヒ)は、ある日労働者階級の娘マリア(ブリギッテ・ヘルム)と出会い、地下に彼女を追いますが、そこで初めて抑圧された過酷な地下での暮らしを知ります。
一方、地下で働く人たちは、マリアの説教に耳を傾け、自分たちを解放してくれる媒介者の出現を待っていました。
そしてマリアは、フレーダーこそが、知的指導者階級の「脳」と肉体労働者階級の「手」を媒介する「心」であると確信します。
そんな二人を盗み見していたフレーダーの父フレーダーセン(アルフレッド・アベル)は旧知の発明家ロトワング(ルドルフ・クライン・ロッゲ)に命じてマリアを誘拐させます。彼女に似せたアンドロイドを地下に送り込んで、労働者たちの反乱を起こさせ、それに乗じて反乱を封じ込める魂胆でした。
しかし、かつてフレーダーセンと恋敵だったロトワングは、彼の支配するメトロポリス事態を壊滅させようとします。
冒頭でもお話しましたが、大正末期の作品です。それも映像自体も完全ではなく、途中で入る字幕も現存するもの・・・という条件付の作品です。
かつて大学時代に習ったドイツ語の復習にはなりますが・・・。(^_^;)
それにしてもこの時代に、100年後の未来をこれほどまでに描ききった作品が撮られたと言う事実に驚きます。
そして背景から小道具まで、現代のSF映画に必要とさえる要素のほとんどが揃っていると言っても過言ではない。「SF映画の原点にして頂点」と呼ばれる所以です。
ロトワングの作り出したアンドロイド、ハル。これってC3POそっくりだし・・・。「映画史上最も美しいロボット」と言われております。
で、物語は単なるSFだけに留まらず、前年製作された「戦艦ポチョムキン」と同様、当時表面化していた資本主義と共産主義というイデオロギーの対立をテーマにしています。
監督のフリッツ・ラングはユダヤ人ですが、ヒトラーはこの作品を気に入っていたらしい。ナチスの宣伝大臣ゲッベルスが、彼の才能を高く買っていたというお話も。
それにしても、メトロポリスにある歓楽街がなんで「Yoshiwara(吉原)」なのか???当時、すでにヨーロッパ中にとどろいていた?よくわかりません・・・。
もちろん、90年も前の映画ですから、古めかしいところは徹底的に古めかしい。しかし「温故知新」ではありませんが、この作品から技術や手法だけでなく、我々が教えられることはたくさんあるような気がします。
「脳と手の媒介者は、心でなくてはならない」
出演:アルフレッド・アベル,グスタフ・フレーリッヒ,ルドルフ・クライン・ロッゲ,テオドル・ロース,ハインリヒ・ゲオルゲ,ブリギッテ・ヘルム
監督:フリッツ・ラング 1926年
BOSS的には・・・★★★☆☆
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