2011.02.20

Books

黄色い部屋の秘密 ガストン・ルルー

今回は、30数年ぶりに読み直したガストン・ルルーの「黄色い部屋の秘密」。密室トリックをつかった古典的推理小説です。

ガストン・ルルーと言えば「オペラ座の怪人」が有名です。ルルーがポーの「モルグ街の怪人」に触発されて創作したそうです。

「世界的な理学者スタンジェルソン博士の城館の一室で惨劇が起きた。鍵と閂と鉄格子で固く閉ざされ、蟻の這い出る隙もないこの部屋から犯人は雲のごとく消え失せ、博士の令嬢が瀕死の傷を負って倒れていた。
犯人はどこから逃げたのか? そして犯人は誰か? 青年探偵ルルタビルは天才的な推理力を武器に敢然と事件に立ち向かう。
ガストン・ルルーの名を不朽にした密室事件の古典的傑作。」


で、問題は彼の仕掛けた密室のトリック。密室であることの必然性とそのトリック。大体、密室内で殺人や襲撃が起こる事自体がかなり前提条件という小説が多いのですが、本作では必然性には違和感はないものの、トリックの謎は現代の解釈からすればやや陳腐かもしれません。

それと、若干18歳の主人公、新聞記者ルルタビルのキャラクターがどうも親近感が沸きにくいと言う点。こういう人物は、大体作家本人のキャラクターが移植されるものなのですが、それにしても個人的には感情移入しにくいキャラなのです。

ただ、ベースがフランス文学であり、私の読んだ新潮文庫では訳者の堀口大學の文体もあって、論理一辺倒の推理小説というよりもフランスものの一冊として読めば、なかなか味のあるラブ・ミステリーです。

それにしても、ルルタビルに色気がないのがちょっとねぇ~。ちなみに創元文庫版では「黄色い部屋の謎」となっておりますが、同じものです。

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