2011.02.24
大停電の夜に
クリスマスイブの夜、大停電に見舞われた東京のとある町で暮らす人たちが織り成す「愛」のつづれ織りの物語。
イルミネーションも鮮やかな大都会東京のクリスマスイブの夕べ。サンタクロースがプレゼントを抱えて家々を訪れ始めるころ。突然町中が停電となり、すべての明かりが消えてしまいます。
投身自殺をしようとするモデルの麻衣子(香椎由宇)を案じ、病院の屋上にやってきた天文少年の翔太(本郷奏多)は、彼女を自転車の後ろに乗せて走り出します。
不倫相手の上司である佐伯(田口トモロヲ)にせがんでホテルで会った美寿々(井川遥)は、喧嘩別れして中国人のホテルマン冬冬(阿部力)と共に、エレベーターに閉じ込められてしまいます。
暗闇の中で離婚届にサインした佐伯の妻静江(原田知世)。早々に帰宅した夫と、久しぶりにキャンドルを挟んで食卓で向かい合います。
6年ぶりに出所した元やくざの銀次(吉川晃司)は、昔の女である礼子(寺島しのぶ)と共に地下鉄に閉じ込められます。陣痛の始まった彼女を背負い、銀次は地下鉄の線路を歩き始めます。
40年以上連れ添った妻小夜子(淡島千景)から、突然結婚前の秘密を打ち明けられた義一(宇津井健)は、衝撃を隠せず家を飛び出してしまいます。
そして、かつてはプロのベーシストだったJAZZバーのマスター木戸(豊川悦司)は、今夜限りで店を閉め、昔の彼女とニューヨークに旅立とうと彼女に電話を入れます。そこへ彼に思いを寄せる向かいのキャンドルショップののぞみ(田畑智子)がキャンドルをもって訪れます。
大停電の夜、もつれかけた糸が繋がり始め、ある者は決断をし、ある者は許し、ある者は愛を行う。クリスマスの夜だから・・・。
のっけから、ビル・エヴァンスの「My Foolish Heart」(アルバム:Waltz for Debby)が流れ、ただならぬ雰囲気(笑)。で、主役格のトヨエツのBARの名前が「My Foolish Heart」。
男女間の「愛」だけに留まらず、登場人物たちが停電の前に捕らわれていたのは、どうにもならない「愛」でした。そして彼らはすべて、自分たちの「My Foolish Heart」に気づく。
それは、「愚かな愛」もあれば「命のすべて」である愛もある。人は真の愛の前には「愚か」になるものだし、「愚かのも」だけが真の愛にたどり着けるから。
大都会の雑踏のように行きかう愛。すれ違う愛、ぶつかり合う愛。離れ離れになってゆく愛・・・。
物語りもシーン展開も映像も脚本もキャスティングも、ある意味完璧です。もちろん、うるうるしました。
サブタイトルは「My Foolish Heart」にして欲しかった。
出演:豊川悦司,田口トモロヲ,原田知世,吉川晃司,寺島しのぶ,井川遥,阿部力,本郷奏多,香椎由宇,田畑智子, 淡島千景,宇津井健
監督:源孝志 2005年
BOSS的には・・・★★★★☆
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