2011.03.07

Books

イギリスと日本―その教育と経済 森嶋通夫著

1977年の初版ですから、もう30年以上前の本です。著者の森嶋通夫氏は1923年生まれ。学徒出陣で海軍航空隊で終戦を向かえ、大阪大学教授を経て渡英、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)教授を歴任され、2004年に亡くなりました。

内容は氏の専攻する経済学のお話よりも、「大英帝国」と言う黄金の19世紀を経てきたイギリスが、あえぎながら作り上げようとする20世紀型の教育システムのお話と、そして73年に発生したオイルショックを克服したわが国経済と、「英国病」と呼ばれる病に沈む60年代以降のイギリスの現状、そして当時ヨーロッパを席巻した日本製品に対する軋轢と対処法を語られたものです。

氏のように戦前生まれの方にとって、「オイルショック」はまさに1941年当時の日本の状況のデジャヴであったことが綴られ、私たち戦後生まれとは明らかに異なる意見を持っておられます。

2011030701.jpgイギリスは60年代以降、「英国病」に悩まされますが、70年代の終わりに登場した「鉄の女」サッチャーによる「規制緩和と小さな政府」を標榜しますが事態は悪化、そして保守党から政権を奪った労働党による「第三の道」により、21世紀を待たずにプラス市長と財政黒字化を実現したことは皆さんご存知のとおり。

先般の同友会大学での清水日銀支店長のお話にもあったとおり、イギリスは今も着実な成長率と低い失業率で推移し、EUを牽引するほどの力はないものの、堅実な国家経済運営を続けています。

その秘密は何なのか?この本からは、これだという結論を導き出すことは出来ませんでしたが、個人的にはイギリス人の生き方には惹かれるものがあります。

テレビでは「イタリアの小さな町」がロハスな暮らしとして取り上げられていますが、私の興味はイギリスにあります。そして大都会東京にはないと思います、黒田知永子さん!

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