2011.03.28
The Shipping News 邦題:シッピング・ニュース
失意に沈む一人の男が、祖先の故郷の小さな漁港の町で次第に自分自身を取り戻してゆくドラマ。サスペンス要素もちょっとスリラーっぽい要素も香らせた、リアリティを描きあげた作品です。
小さい頃に父から受けた厳しい教育のせいで自己確立の出来ないまま育った新聞印刷工場の工員クオイル(ケヴィン・スペイシー)は、ふとした事で出会った派手な女性ペタル(ケイト・ブランシェット)とベッドを共にし、彼女に恋してしまいます。
二人の間には一人娘のバニー(アリッサ・ゲイナー、ケイトリン・ゲイナー、ローレン・ゲイナー(3つ子の役者さん))がいましたが、妻は家を空けて男たちと遊び歩く毎日。そしてある日、男と計ってバニーを闇市場に売りさばいた直後、事故死してしまいます。
そんな彼女でも忘れることが出来ず、失意に沈む彼の元にやってきたのは、自殺した父の妹でおばにあたるアグニス(ジュディ・デンチ)。クオイルとバニーは彼女と共に、ニューヨークから父の故郷であり祖先の故郷でもあるニューファンドランド島に移り住みます。
地元の新聞記者としての職を得たクオイルは、毎日漁ばかりでめったに出社しない社長のジャック(スコット・グレン)から港の記事を書く「シッピング・ニュース」担当を命じられます。
社には他に、古株のタート(ピート・ポスルスウェイト)、家庭欄とゴシップ記事担当のビリー(ゴードン・ピンセント)、イギリス人ナットビーム(リス・エヴァンス)がいました。
そして託児所を切り盛りする未亡人のウェイヴィ(ジュリアン・ムーア)と出会い、彼女に思いを抱くようになります。
しかし彼らの移り住んだ祖父母の住んでいた岬に立つ屋敷には、過去の忌まわしい記憶が封印されているのでした・・・。
いきなり主演女優級のケイト・ブランシェットが出てくるのですが、なにやらいつもの役とは違って荒れ放題。この先どうなっていくのやらと思いきや・・・。
で、親子は都会を離れて雪に包まれたニューファンドランド島に移り住むわけですが、ここの景色がとにかく素晴らしい。スコットランドにも似た荒涼とした島の風景なのですが、そういう冷え切って透き通ったような冷たい自然の中に暮らす人々が、暗闇に中にぽつりぽつりと灯された家の明かりのように暖かい。
これはもちろん監督ラッセ・ハルストレムの手腕によるところ大なわけで、短い時間ながら登場人物をきちんと描ききっているからこそその立体表現に成功しているのです。
先にもお話しましたが、ヒューマンドラマというよりはノンフィクション・ドラマ風であり、サスペンスやスリラー要素もあるのですがほどよくて、現実感を抱かせることに一役買っています。
ケヴィン・スペイシー自体は特に好きな役者さんではないのですが、この役にはまったくのはまり役です。
007シリーズのSISのM役、ジュディ・デンチ。この人が出ると、作品がグワーッとイギリスっぽくなりますねぇ。この人も絶妙なキャスティングです。影薄い助演女優ジュリアン・ムーアは、インディペンデントから大作まで、幅広く出演していますが、とにかく地味。まあ本作ではこのくらいがやはり全体のバランス的にもよかったのかな?
基本プロットは陳腐で地味地味な作品なのですが、物語の背景や脚本、演出と人を見つめるカメラワークのおかげで、限りなく★4つに近い作品でした。
出演:ケヴィン・スペイシー,ジュリアン・ムーア,ジュディ・デンチ,ケイト・ブランシェット,ピート・ポスルスウェイト,スコット・グレン
監督:ラッセ・ハルストレム 2001年
BOSS的には・・・★★★☆☆
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