2011.04.11
「超訳 ニーチェの言葉」
私たち経営者とは、実践書としてのさまざまなビジネス書や、ドラッガーなどの企業経営や経営者としての基本姿勢を問うものから、論語をはじめとするさまざまな「人生訓」に触れ、自らのあるべき姿や進むべき道を模索する動物です。
最近こういうセミナーや道場ブームもあって、あちこちでこういう話を聞きますし、なんならTwitterで毎日つぶやいている人もいる。
どれも間違ってはいないし、正しいことだと理解できるのですが、実行不可能だったり、あるいは合い矛盾することも往々にしてあります。正直、ちょっと食傷気味。
そこで、哲学と言うベースから出てきた言葉は、手法レベルではなく人間存在の、あるいは形而上的なところから発せられる言葉かもしれないと、ベストセラーとなった偉大なる哲学者ニーチェの言葉を集めた本書を読んでみました。
タイトルに「超訳」とあるように、本書はそもそもニーチェが書いた原書をそのまま翻訳したものではありません。彼の著した有名な「ツァラトゥストラはかく語りき」や、「人間的な、あまりに人間的な」などの哲学書から拾い出した短文にタイトルをつけて「彼からのメッセージ風」に仕立てたものです。
簡単に言えば映画をスチールで観るようなもので、決して物語全体を見たことにはならない。素敵なカットや気の聞いたせりふだけが記憶されたような状態なのです。そして本書からは、ニーチェの特徴である実存主義は、予備知識があれば垣間見える程度。
まあ、「論語」でも同様のことは言えるわけですが、「ニーチェ=偉大な哲学者」とは逆に縁を切ったほうがいいかもしれない。もちろんその言葉には含蓄のあるものも多く含まれています。
061 勝利に偶然はない
勝利した者はもれなく、偶然などというものを信じていない。たとえ彼が、謙遜の気持ちから偶然性を口にするにしてもだ。
065 反対する人の心理
提示されたある案に対して反対するとき、よく考え抜いたうえで確固とした根拠があって反対する人はごく少ない。多くの人は、その案や意見が述べられたときの調子とか言い方、言った人の性格や雰囲気に対して反発の気分があるから、反対するのだ。
118 カリスマ性の技術
自分をカリスマ性を持った深みのある人間であるように見せたいなら一種の暗さ、見えにくさを身につけるようにすればよい。自分をすべてさらけださないように、底が見えないようにするのだ。
119 体験だけでは足りない
確かに体験は重要だ。体験によって人は成長することができる。しかし、さまざまな体験を多くしたからといって、他の人よりもすぐれていると言うことはできない。
体験しても、あとでよく考察しなかったら、何にもならないのだ。(後略)
140 怠惰(たいだ)から生まれる信念
(前略)信念がある人というのはなんとなく偉いように思われているが、その人は、自分のかつての意見をずっと持っているだけであり、その時点から精神が止まってしまっている人なのだ。つまり、精神の怠惰が信念をつくっているというわけだ。
結局、「論語」と同じように、その日めくったページを読んで身につけようとしたところで、体系だっていなければ個人の存在に組み込まれてその発芽となることは難しいような気がします。