2011.06.18
ミッション・インポッシブル E38ブレーキシステム交換作業
車のタイヤは磨り減って走ります。だから交換が必要になります。ブレーキはパッド(ライニング)が磨耗して止まります。だからこれも交換が必要になります。
ディスクブレーキシステムの場合、ブレーキを踏むとパッドはディスク・ローターという金属の円盤に押し付けられて摩擦で車が止まります。で、国産車の場合は通常、パッドの方だけの交換で済みますが、欧州車の場合は両方が磨り減ることによって止まるようになっています。
つまり欧州車である我が愛するモビーは、交換の際にはパッドとローターの両方となるわけです。
しばらく前から、「あんちゃん、パッドがありまへんがな!」と関西弁で警告を受け続けた愛しき日々。BM乗りの方はご存知でしょうが、とにかくあの警告のいやなこと、いやなこと。眠い朝に、同性の声で起こされる不愉快さを想像してみてください。(^_^;)
いやそんなことより、いよいよパッドがなくなればブレーキが効き辛くなりますし、最悪ローターが割れて、ブレーキが全く利かなくなる!!!これはちょっと、アブナイ状況です、どう考えても・・・。
で、ディーラーさんとかに修理に持ち込むわけですが、モビーの場合だいたい部品・工賃込みで10諭吉~15諭吉もします。たらふく焼肉が食べられます。死ぬほど食べられます。
かといって、ブレーキ関連の交換ですから、素人が手を出すのは・・・。
でも素人でも、いけいけのおっさんは手を出します。足も出しますが、まず手を出します。今回はその奮闘記をば・・・
その昔、ナナハンのブレーキパッドを交換したことは何度かあるのですが、4輪車は初めて。最悪、元に戻せば・・・という、いつもの向こう見ずです。
いけいけのおっさんでも、用意は周到です。なんたって、2トン以上もある物体を停止させる機能をいじるわけですから。
ネットでパーツ図を見たり、先輩方の交換記を拝読したり、事前によくお勉強しておきます。
で、準備したのは以下の通り。購入はいつもの通り、ヤフオクです。
〔部品〕
1.ディスク・ローター前後4枚:TRW:24,550円
2.ディスクパッド前後4セット:Delphi Lockheed:14,700円
3.アラート・センサー前後2個:3,600円
〔特殊工具〕
1.ブレーキ・スプレーダー:1,980円
〔消耗品〕
1.ブレーキシムグリース:1本:829円
2.ブレーキクリーナー:4本:298円x4
3.CRC556:1本:298円
4.S字フック:1本:80円
5.サンドペーパー:1枚:75円
6.油差し:99円
7.軍手:2枚(4枚は欲しかった・・・):35円x2
8.ウェス:若干
9.ルイボスティー:500ml(喉を潤すため)
作業費:BOSSの日当:時給100万円x4時間 (^_^;)
さて、予約しておいた貸しガレージに行っていよいよ作業開始です。緊張します。「蚊取りはキンチョー」です。まずはタイヤ1本当たり5本ついているホイールボルトをすべて一度緩め、ジャッキアップしてから完全にボルトを抜いてタイヤをはずします。
国産車の場合は、たいがいナットをはずしてボルトにタイヤがぶら下がるのですが、BMはボルト、つまり全部はずすとタイヤが落下してきます。「足元注意!」
タイヤをはずすとブレーキユニットが顔を出します。こんにちは、お元気でしたか?
固定スプリングをドライバーでこじって取り外し、裏側にあるガイドスリーブのキャップをはずしてヘックスレンチで2本のガイドボルトをはずせば、キャリパーケースが外れます。この時、ピストン側のパッドはピストンにささったままになり、反対側はバックプレートの上に残りますので、2枚とも取り除きます。
はずしたケースはホースが傷まないよう、S字フックでスプリング等から吊るしておきます。ガイドボルトは、クリーナーとサンドペーパーできれいにしておきます。
パッドの交換だけでしたらここまでの作業でOKなのですが、今回はローター(ディスク本体)も交換するため、キャリパーケースを支えるバックプレートもはずします。こちらは裏側の普通のM12のボルト2本でとまっています。ここまでくれば、恥ずかしいほどのすっぽんぽんですね!ただこのボルトはキャリパー自体を固定しているわけですからとっても大事なボルトです。考えれば8本で2ton、1本あたり300kg近い車重を止めるわけですから・・・。
次にローターをはずします。こちらはM8のアレンボルト1本で固定しているだけ。車軸との固定自体はホイールの5本のボルトで固定されますから、こんなものでいいのでしょう。でも、なめると怖いので念のためにCRCを吹いてから作業します。
ブレーキユニットが取り払われた、ちょー恥ずかしい写真。ダストなどをクリーナーをさんざん吹き付けて掃除しておきます。
新しいローターです。さび止め油が塗布されていますので、クリーナーを思い存分吹き付けて、ウェスでふき取りきれいにします。油が残っていると、交換後しばらく甘いブレーキと言う怖い目にあいますから・・・。で、今回は1箇所につき1本使うつもりで計4本準備したのですが、さんざん使っても結局3本あれば十分でした。
新旧ディスク比較。左が旧で右が新です。左はよく見ていただくと全体が2ミリ以上削られ、外周部のエッジが立って残ったような状態になっています。
こちらはフロントパッドの新旧比較、タテにして並べた図。外側2枚が旧で、内側2枚が新。新品では10mm近くあるパッドの磨耗部分が、旧ではかぎりなくゼロになっているのがわかると思います。もう完全に限界が来てました。実はとても怖い映像なのです。(>_<)
さて今度は逆の手順で、復旧作業。まずは新品のローターを取り付けます。ボルトはM8アレンボルト。この段階でも念のためにクリーナーぶっかけて、ウェスでふき取りしておきます。
で、ここで新しい作業。実は車のブレーキシステムは油圧でピストンを押してパッドをローターに押し付けているのですが、パッドが磨耗するとピストンは次第にローター方向にせり出してゆきます。そのせり出しを埋めているのが補充のブレーキオイル。
で、新しく厚みのあるパッドを装着するにはピストンを元の新車状態に押し戻さないと隙間に入らないのですが、ピストンを押し戻すとオイルも押し戻されます。
押し戻されても溢れないよう、念のためボンネット内のマスターシリンダーのところにあるエクスパンションタンクのオイルを適量抜き取っておきます。後でブレーキ側で油圧をかけますので、蓋ははずしたままにしておきます。
こうしてみると結構、汚れているかも・・・。しかしブレーキオイルの交換は、正式にやるとなるとエンジンオイルどころではない。エアー抜きとかきっちりできないと、それこそブレーキが効かなくなります。それに今回はDOT4買ってないし・・・。こちらはまた、老後の楽しみにとっておくことにして、見なかったことにします。
手順としてはバックプレートを取り付け、キャリパーケースに新品のキャリパーをセットするのですが、ここで先にお話したように、押し出されてきたピストンを推し戻してやる必要があります。秘密兵器「スプレーダー」の登場です。
ケースの内側にスプレーダーをセットし、くるくる回すとピストンが押し戻されて元に位置にもどってゆきます。だたしこの作業は時間をかけてゆっくりと。すこし斜めになったりしますので、ピストンかシリンダーでもいためたら大変ですので、慎重に作業します。
ピストンが元にもどった!の図。
で、各ユニットに2枚ずつの新品パッドを取り付けるのですが、パッドのローター側ではない方に、鳴き止めのシムグリースを塗っておきます。くれぐれもローター側には塗らないこと!(^_^;)
キャリパーケースを取り付け、固定スプリングを元通りに戻せば完成。はい、よくできました。ハナマル!残りの3本も同じように作業してゆきます。
私はまず、右フロントから作業したのですが、右リアには例のいやなやつ、磨耗センサーがついています。ここの作業のときには、キャリパーケースをはずすまえにジョイントBOXの中に隠されたコネクターを抜いておきます。
フロントは左についているのですが、センサーがある場合は、パッドにセンサーをセットします。下の写真は、左リア用のパッドです。ピストン側のパッドについていましたので、同じようにしてセットします。
取り外した前後ローターの拡大写真。左がベンチレーテッドになったフロント用。それぞれエッジだけが削れないで残っているのがわかります。フロントは2mm、リアは1.5mmほど削られています。パッドは、リアはまだ3mmほど残っていて、センサーも削られるところまでいかず無事でしたが、新品を購入してあったので交換しました。
こうして4本全てを交換。作業時間は、写真を撮ったり、はずしたホイールの裏側にたまりにたまったダストを掃除したりしながら約4時間。黙々と作業すれば2時間ほどでしょうか?いえ、わたしはもう二度としませんが・・・(^_^;)
で、新しくなったフロントとリアのお披露目。
すべての交換作業を終え、あたりにネジや部品が残っていないことを確認し(爆)、念のためにもう一度ホイールボルトが締まっているか確認し、って、あわてて走り出してタイヤがはずれたら、しゃれになりませんから・・・。
そしていよいよエンジン始動です。この時、セルを回さないでイグニッションをONにしたまま20秒ほど放置すると、例の意地悪な警告が消えます。で、センサーも結線も無事終えたと確認できるわけです。
警告が消えたことを確認したらエンジン始動。今度はブレーキオイルが正常に行き渡ることを確認します。そうそう、最初にあけたエクスパンション・タンクの蓋をするのを忘れないように!そしてオイルレベルも確認しておきます。
で、最初は油圧が来ませんので、静かに奥までブレーキを踏み込みます。一度戻すと、ほぼ通常状態に戻りますので、あとは軽く何回かポンピング。
それでも走り出してみなければ、本当に大丈夫かわからないのが、いけいけ似非整備士の仕事。でも、なんとか今回は無事、いけたようです。異音も振動もまったくありません。
ただ、なんといってもローターもパッドも新品です。それぞれが程よい接触関係になるまでは慣らしが必要。交換後、走行距離100kmくらいまでは急ブレーキは避けましょう。はい、犬猫が飛び出してきても無視しましょう。お年寄りなら、止むを得ずキューブレーキですね!(>_<)
いずれにしても、変えたからといっていきなり「急ブレーキテスト!」は禁物です。
ああ、それにしてもあのいやな警告灯のついていないコックピットの心地よさ。マーカス・ミラーが心地よく響きます。
といっても皆様、決して安易に真似なさらぬように。出来ればちゃんとした整備士の方にやっていただきましょうね!(^_^;)