2011.07.23
邦題:ハゲタカ
「ハゲタカ」と異名をとる辣腕ファンドマネージャーと、残留日本人孤児のファンドマネージャーとの壮絶な戦いを描いた社会ドラマ。NHKの同名ヒットドラマの映画化。TVシリーズとは異なるタイムリーな話題の折込に成功した作品。役者もなかなかです。772本目の映画投稿。
ニューヨークのファンドで鳴らし、徹底した合理化で企業を買い叩き再生する、「ハゲタカ」と呼ばれる天才ファンドマネージャーの鷲津政彦(大森南朋)。しかし株の持合などで閉鎖的な日本のマーケットに嫌気が差し、今は南海の島でセミリタイア生活を送っていました。
そんな彼の元にやってきたのは、かつての銀行員時代の上司、芝野(柴田恭平)。彼は、年商5兆円を超える大企業でありながら、業績の悪化したアカマ自動車に企業再生マネージャーとして迎えられていました。そして、海外のファンドによるアカマ自動車のTOB(敵対的企業買収)を察知した芝野は、鷲津にホワイトナイトになることを依頼します。
アカマ自動車を狙うファンドとは、日本の先進技術力を我が物にしようと画策する中国政府系のファンドでした。そしてその買収の命を受けたのは、「赤いハゲタカ」こと劉一華(玉山鉄二)。残留日本人孤児三世の彼は、ニューヨーク時代に鷲津の勤めていた投資会社の後輩でもありました。
かつての後輩が、最大のライバルとしてTOBを開始。鷲津も応戦するものの、莫大な中国政府の資金力の前に、次第に状況は不利になってゆきます。
TVシリーズの当時から、さらに世界金融は変化と混沌を極め、しかしその変化を巧みに取り入れた本作は、TVシリーズとはまた違ったスリリングな展開となっています。
中国経済の台頭だけでなく、サブプライム問題やリーマンショック、派遣切りなど、ついこの間までニュースを賑わせていた話題がうまく物語に織り込まれています。
キャスティングでも、大森南朋、柴田恭兵のオリジナルキャストに対抗するミステリアスな役の玉山鉄二がまたいい。
特に二人のメガネの戦い、いや、ファンドマネージャー同士のつばぜり合いが見物です。
ただ、TVシリーズを映画化した場合に良くあることなのですが、ちょっと説明的にシーンが長い。このあたりが、映画畑で育った人間だと、結構無情にばっさりカットするのですが、どうもそのへんがテレビ屋さんには難しいようで、どでかい画面のテレビを見ているような錯覚に陥ってしまいます。
大森南朋、武市半平太役ではどうもいじいじしてて感情移入できなかったのですが、これはいいです。
いずれにしても、こういうきったはったの戦いに(馬鹿な)男という人種はついつい憧れ、肩で風切る登場人物に憧れたりするのですが、目の前の仕事は・・・。
いや、だからこその映画なのかもしれません。地で行ってしまうと、本当の地獄を味わうことになるのかも・・・
出演:大森南朋,玉山鉄二,栗山千明,高良健吾,遠藤憲一,松田龍平,中尾彬,柴田恭兵
監督:大友啓史 2009年
BOSS的には・・・★★★☆☆
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