2012.01.10
Buffalo Soldiers 邦題:戦争のはじめかた
冷戦時代末期のドイツ駐留アメリカ陸軍基地を舞台に、軍紀の乱れた兵士たちの姿を描いた問題作。644本目の映画投稿です。
冷戦末期の1989年、ドイツのシュツットガルト。ここにあるアメリカ陸軍基地の娯楽室では、今日も些細なことから暇をもてあました兵士同士のけんかが始まり、あげくに一人の兵士が死亡。彼は戦死として処理されます。戦うべき相手のいない兵士たちはみな、暇をもてあましていました。
第317補給大隊に所属するエルウッド(ホアキン・フェニックス)は、バーマン大佐(エド・ハリス)直属の事務官という立場を最大限に利用し、ヘロインの密造や軍事物資の横流しをしていました。
ある日、エルウッドの新しい上官としてリー曹長(スコット・グレン)が赴任してきます。曹長は、エルウッドたちの裏の行動に疑問を持ち始めます。
その日、演習中の戦車部隊のうち、ヘロインでご機嫌の一両が市街地を暴走。ガソリンスタンドで大爆発を引き起こし走り去ります。たまたまそこに居合わせた物資輸送の兵士たちは爆死し、通りがかりのエルウッドたちはトラックを盗みます。
彼らは積荷の大量の兵器を核ミサイル基地に隠し、馴染みの取引相手である闇取引商を訪問し、モルヒネ30キロと交換する取引を結びます。
宿舎に帰るとエルウッドの部屋にはリー曹長とMPがいて、彼の部屋を家捜ししていました。
古くは宗教対立や帝国主義、国粋主義やイデオロギーなど、国家という集合体は常にその領有地を拡げることに腐心し、その手段として武力を行使しました。
しかし20世紀の二つの大戦の後、軍事力が重要な国力であることに変わりはありませんが、国威発揚はそう単純なものではなくなりました。ベトナムしかり、その他の地域紛争しかり。
そして50年も続いた長い東西冷戦は、戦いのない長い戦争であり、現場の士官たちにとって若い兵士たちの士気を高く保つことが相当に難しいことは、現代の経営者と同じ悩みでもあるはずです。
本作は、ベルリンの壁が今まさに崩壊しようとする頃、その壁の意味さえ理解していないドイツ駐留のアメリカ陸軍の兵士たちの暇にあかした乱れた軍隊生活を通して、別の視点から戦争の意味を問う作品。テーマはニーチェの有名な警句、「平和な時、戦争は自ら戦争する」です。
結局、堕落した若い兵士たちにその責はなく、しかしそれでも戦争をやめない人間のおろかさを訴えているわけで、それは実は成熟した世界における国家と国民との関係にも言えることでしょう。
最近、論語を読み返しているのですが、その答えが「孔子」語録の中に見出せるような気もしない。こうして人類と言うおろかな民は、ずっとさまよい続けて行くのでしょうね。だからこれからもずっと、どんなに目のさめるような鮮やかな未来がやってこようと、道徳や哲学、宗教が必要だと思います。
出演:ホアキン・フェニックス,アンナ・パキン,エド・ハリス,スコット・グレン,エリザベス・マクガヴァン,マイケル・ペーニャ,レオン・ロビンソン
監督:グレゴール・ジョーダン 2001年
BOSS的には・・・★★★☆☆
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