2012.03.13
LILACS 邦題:ラフマニノフ ある愛の調べ
ピアノの魔術師と呼ばれたソビエトの天才作曲家ラフマニノフの半生を描いたソビエト製ロシア語のドラマ。668本目の映画投稿です。
1918年、レーニン率いるボリシェヴィキが政権を掌握したロシアを後にしたラフマニノフ(エフゲニー・ツィガノフ)はアメリカに渡り、主催者のスタインウェイ(アレクセイ・コルトネフ)を伴って全米ツアーを敢行します。
幼い頃からピアニストとして厳しい教育を受けてきた彼には、作曲家になるという夢がありました。届けられたライラックの花束に香りに触れ、幼い頃の記憶がよみがえります。
1880年代のロシア。10歳の頃に両親が離婚し、彼は厳格なピアノ教師ズヴェレフ(アレクセイ・ペトレンコ)に引き取られます。
ラフマニノフの才能を見抜いたズヴェレフは、厳しく彼を指導します。が、作曲の喜びに目覚めていた彼はズヴェレフと決別します。
彼はその頃、アンナ(ヴィクトリア・イサコヴァ)という女性に恋をしていました。そして、彼女へのあふれる思いを綴った初めての大曲「交響曲第一番」が生まれますが、初演は大失敗に終わり、彼は恋と名声を一夜にして失ってしまいます。
傷心の彼に救いの手を差し伸べたのは、従姉妹のナターシャ(ヴィクトリア・トルストガノヴァ)でした。彼女に頼まれた医師ニコライ・ダーリ(イーゴリ・チェルニェヴィチ)の催眠療法によって、再び作曲への情熱を取り戻すラフマニノフ。しかし今度は、彼がピアノ教師を務める高校の女生徒マリアンナ(ミリアム・セホン)と恋に落ちます。
若々しい彼女の魂と肉体の輝きは、彼に名曲「ピアノ協奏曲第2番」の旋律を与えます。そして苦しいときにいつも彼を見守ってくれていたナターシャの愛に気づき、彼女にプロポーズするのでした。
ラフマニノフといえば、私の大好きな作曲家。映画好きの皆さんも、「逢びき」「旅愁」「七年目の浮気」で使われたピアノ協奏曲第2番や、「シャイン」で使われた第3番などでご存知の通り。
彼はチャイコフスキーの後継と目され、スクリャービンと共に主席でモスクワ音楽院を卒業しますが、前述の通り交響曲第一番の失敗で挫折を味わいます。
その後、精神科医ダーリの暗示療法により自信を取り戻し、彼に献呈された「ピアノ協奏曲第2番」で名声を確立します。
物語はアメリカ亡命後の演奏旅行から始まるのですが、いきなり少年時代や青年時代に遡るため、ちょっと展開がわかりにくい。
それにしても主演のエフゲニー・ツィガノフ、本物そっくりですなぁ~。
作品は多少史実と異なる展開も含みながら、彼を時に支えインスパイアし、またある時は彼を打ちのめした3人の女性を通して描かれています。
演奏会には必ず届いたと言う「ライラックの花束の伝説」もうまく織り込まれています。
ただ、先にもお話したとおり、唐突に時間の流れが変わり、またコンテもカメラワークも正直稚拙であり、ハリウッド製ではないことを思い出させます。
ソビエト映画もこれを観るとなかなか担ってきたなと思うと同時に、やはり切磋琢磨かつサービス精神にあふれるハリウッド映画のすごさも実感。
まあかの国も、やっと亡命者を正当に扱うことの出来る時代になったと言うことでしょうか?ちなみに全米ツアーに同行していたスタインウェイは、あのピアノのスタインウェイです。
クラシックファンには出来れば見ていただきたい1本だと思います。これを観て、初めて「ピアノ協奏曲第2番」を聞くもよし・・・。
出演:エフゲニー・ツィガノフ,ビクトリア・トルガノヴァ,ヴィクトリヤ・イサコヴァ,ミリアム・セホン,アレクセイ・コルトネフ,イゴール・チェネヴィチ
監督:パーヴェル・ルンギン 2007年
BOSS的には・・・★★☆☆☆
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