2012.04.17
サン=サーンス 歌曲「サムソンとデリラ」(1874年)
義務教育で習った、「動物の謝肉祭」の作曲家カミーユ・サン=サーンスが13曲作ったオペラの中で、唯一有名なのが「サムソンとデリラ」、旧約聖書に出てくる古代イスラエルの英雄サムソンを題材にした3幕仕立てのスペクタクルです。
舞台は紀元前12世紀のパレスチナ。サムソンは、ペリシテ人の支配に抗するヘブライ人たちのリーダーでした。
何とか彼を倒したいダゴンの大司祭は、ペリシテ人の妖艶な美女デリラに彼を誘惑し、その怪力の秘密と弱点を探るように命じます。
群集のリーダーたるサムソンですが、所詮はただの男。まんまと彼女の誘惑に屈し、弱点を知られて捕らえられてしまいます。
という、まあいつものごとくあざとい女性と間抜けな男のやり取りを描いたオペラらしいオペラです。
ただ、作曲家がフランス人ということもあってか、たとえばワグナーのドイツオペラなどとは異なるエキゾチックな色彩美と官能的な旋律に溢れています。
特に有名なアリアは、第2幕第3場の「あなたの声に心は開く」。エンディングの屋台崩しが見もの。
一般的にオペラではか弱く美しい(大概死んでしまう)ヒロインがソプラノで、悪女や脇役がメゾ・ソプラノが多いのですが、デリラはメゾ・ソプラノ。
このあたりも落ち着いて聴ける、そしていつしか我が身もサムソンとなってしまう所以かもしれません。
マリア・カラスが有名ですが、所蔵版はお馬鹿な怪力男サムソンがプラシド・ドミンゴ、妖艶なデリラはヴァルトラウト・マイヤー、チョン・ミュンフン指揮パリ・バスティーユ歌劇場管弦楽団及び合唱団。1991年の録音です。