2012.06.05
The Thin Red Line 邦題:シン・レッド・ライン
太平洋戦争の激戦地、ガダルカナル島の戦いを部隊に、若い兵士たちの姿を通して戦争や死について問いかけた戦争映画。ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作品、アカデミー賞はノミネートのみ。684本目の映画投稿です。
1942年8月、西太平洋ソロモン諸島のガダルカナル島。アメリカ陸軍C中隊のウィット二等兵(ジム・カヴィーゼル)は、無許可離隊をしてメラネシア系原住民たちの村で楽園生活を満喫していました。
度重なる離隊から連れ戻された彼は、罰として古参のつわものであるウェルシュ曹長(ショーン・ペン)から看護兵への配属命令が下されます。
一方、C中隊を率いるトール中佐(ニック・ノルティ)はたたきあげで、自らの昇進を何よりも優先する軍人。クィンタード准将(ジョン・トラヴォルタ)の見守る前で実行された上陸作戦の成功に軍人生命を賭けていました。
予想外に容易に上陸を果たした兵士たちの行く手に、最後の防衛戦を挑む日本軍の立てこもる210高地が現れます。
次々と倒されてゆく米兵たち。進軍と攻略を焦るトール中佐の強引な突撃命令を、部下の中隊長スターロス大尉(イライアス・コティーズ)は若い兵士たちに無駄死にさせたくないと拒絶します。
ガダルカナル島での壮絶な戦闘については、以前このブログでも書きました。
それまで負け戦の連続だったアメリカ陸軍の兵士たちにとって、この島への上陸と言うのは「死」を意味していました。
ただ、数ヶ月前のミッドウェー海戦で南方戦線の主役だった帝国海軍は壊滅的な打撃を受け、陸軍の支援をうけてのこの島の死守は、日本軍にとってはまさにこの戦争の天王山でした。
諜報戦や作戦上有利にたった連合軍は、送り込んだ圧倒的な兵力と火器により、餓死寸前だった日本軍を駆逐してゆきます。
そういう歴史的事実の描写の中から、若い兵士や将校たちのさまざまな思い、彼らを翻弄する戦争と言う殺し合いを内面からも描き出します。
「戦争は魂を汚す」
圧倒的に敵を殺害し駆逐しても、そこには勝者としての喜びはない。許された「殺人」に対する自責。
捕虜となった瀕死の日本兵の言葉、「貴様もいつかは死ぬ」ということが、戦争のおろかさとそれに借り出された未来ある若者たちの魂の穢れを描き出します。
「大和」や「君を忘れない」では決して語られることのなかった戦争の意味を、しっかりと伝えてくれます。
ちなみに「シン・レッド・ライン」とは1815年のワーテルローの戦いで、フランス近衛兵の突撃をモン・サン・ジャンの高地で撃退した、イギリス近衛兵の赤い上着のことなのですが、「血塗られた一線を越えたとき、人は・・・」ということかもしれません。
出演:ショーン・ペン,ジム・カヴィーゼル,エイドリアン・ブロディ,ベン・チャップリン,ジョン・キューザック,ニック・ノルティ,ジョン・トラヴォルタ,ジョージ・クルーニー
監督:テレンス・マリック 1998年
BOSS的には・・・★★★☆☆ もっとムービー・アーカイブスはこちら >>> 「ムービー・インデックス」