2012.07.03
TORA!TORA!TORA! 邦題:トラ・トラ・トラ!
太平洋戦争開戦となった日本海軍による真珠湾奇襲作戦を描いた日米合作映画。689本目の映画投稿です。
1939年9月。山本五十六中将(山村聡)の連合艦隊司令長官就任式が、瀬戸内海に停泊中の戦艦長門艦上で行われます。
その直後、首相近衛公爵(千田是也)が開いた閣議の席で、陸軍大臣東条英機(内田朝雄)はアメリカの日本に対する経済封鎖対して、アメリカとの開戦を進言します。
41年1月。ワシントンの海軍情報部は日本の暗号無電を解読。ルーズベルト大統領は、キンメル提督(マーティン・バルサム)を太平洋艦隊司令長官に任命し、日本の動向に備え始めます。
41年11月。陸相兼首相となった東条英機はアメリカとの開戦を決定、南雲中将(東野英治郎)率いる日本海軍空母機動部隊は、密かに択捉島のヒトカップ湾に集結し、11月26日にハワイに向けて出港します。
同年12月2日、大本営より機動部隊に対して「ニイタカヤマノボレ」(戦闘行動開始)の電文を受け、12月8日午前1時30分、200機弱の航空機が真珠湾目指して発信してゆきます。
12月8日日曜日のハワイ。現地時間7時49分に攻撃隊は真珠湾上空に到達し、各機に全軍突撃信号が下命、同53分に攻撃隊総指揮官淵田中佐(田村高廣)は南雲中将の乗る旗艦赤城に向けて、有名な「トラトラトラ」(ワレ奇襲に成功セリ)を打電。
こうして4年近く続く太平洋戦争の火蓋が切って落とされます。
そもそもは、「史上最大の作戦」で大成功を収めた20世紀フォックス社が2匹目のドジョウを狙って企画した作品で、当初日本側の監督には黒沢明の名が上がっていたようです。
本作は戦闘映画というよりは正しく戦争映画であり、何ゆえ日米が戦争に突入するにいたったのか?また、日本の宣戦布告を予見しながらアメリカ軍は何ゆえこれほど甚大な被害を受けたのかということを、鋭くえぐっている。
ということで、かなりの時間を政治的、あるいは戦略的なやりとりに費やしています。実際、数時間のほぼ一方的な攻撃でしかなかったこの戦闘を、延々描くこともなかったでしょう。
逆に、実際の空母から発艦して行く実機の迫力や、編隊飛行・攻撃シーンの迫力は、まさに実機ならではの重量感空気感があり、CGでは決して味わえない映像となっています。
B-17の方輪着陸などは、今では考えられないとても危険な一発スタント。
ただ、画面のほとんどを占める日本軍機は、飛行可能な米軍機を改造したものですので、ゼロ戦にしてはあまりに主翼がスマートだったり、旗艦赤城のマストが使用されたレキシントンそのもので左舷についていたりと、その系の方には突っ込みどころも満載ではありますが・・・。
圧倒的な勝利、のはずが目的の空母は湾におらず、作戦後の山本長官のまなざしが見つめていたのは、4年後の日本の行く末だったのかもしれません。1年半後、彼はラバウル近くで戦死します。
そして、「艦隊を無事日本に戻す。戦争はこれからだ。」と語った南雲中将は、半年後のミッドウェー海戦で主力空母のほとんどを失い、44年7月にサイパン島の陸戦で戦死を遂げます。
本作は、戦争のおろかさとか、戦争に立ち会った人々の人間性に触れることはありません。そういう意味では、記録映画に近いのかもしれません。
そして一部のアメリカ人の心には、あれから70年たった今でも「リメンバー・パールハーバー」という言葉が刻まれているのです。
出演:マーティン・バルサム,山村聡,ジョゼフ・コットン,三橋達也,E・G・マーシャル,田村高廣,ジェームズ・ホイットモア,東野英治郎
監督:リチャード・フライシャー,舛田利雄,深作欣二 1970年
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
BOSS的には・・・★★★☆☆
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