2012.09.04

Movies

邦題:二百三高地

明治末期の日露戦争の勝敗を決した旅順攻略の戦いを、政府から一兵卒までを通して描いた戦争映画。702本目の映画投稿です。

明治維新から40年足らず。ニコライ2世が即位したロシア帝国の南下政策は満州から朝鮮半島にまで及び、朝鮮半島の支配を目論む明治政府と真っ向から対立することになります。

203.jpeg対ロ開戦か妥協による講和か。軍事力も経済力もロシアの1割程度しかなかった日本にとって、開戦はまさに国の命運をかけた決断でした。ロシアの力を知る首相伊藤博文(森繁久彌)は開戦に慎重であり、国内でも世論は二分されていました。

ある日、開戦論を唱える壮士たちと戦争反対を叫ぶ平民社が街中で対立し、一人の男に襲われた平民社の松尾佐知(夏目雅子)は、たまたま通りかかった小学校教師の小賀武志(あおい輝彦)に救われます。

その頃伊藤首相は、参謀本部次長の児玉源太郎(丹波哲郎)から、ロシアへの早々の大打撃と直後の講和しか日本が生き残る道はないと聞かされていました。

明治37年2月4日、御前会議で明治天皇は開戦の決議に裁可を下します。ここに日露戦争の火蓋が切って落とされます。

いわゆる「日露戦争」のうちの主に「旅順攻略」を、関係者の人間模様を交えながら描いたヒューマンドラマ・ベースの戦争映画です。

ちょんまげを落とし羽織袴を脱いでわずか30数年後に、東アジアに吹き荒れる帝国主義、植民地主義に対抗して、日本は国力が10倍も違うロシアに宣戦布告します。

そのロシアの最前線、朝鮮半島の付け根にある軍港旅順を攻略するため、乃木希典大将率いる第三軍が決死の突撃攻撃を行いますが、最新式の工法で構築された高地要塞をなかなか攻略することが出来ず、甚大な被害を蒙ります。

ご存知の通り、最終的には日本軍はこの203高地を奪取し遠路航行してきたロシア・バルチック艦隊を撃破、ポーツマス条約により戦後処理を有利に進めることになります。

しかしその結果、ロシアは革命、そして第二次世界大戦へを歩みを進めることになり、一方の日本は満州の実効支配と満州国の樹立、そして太平洋戦争へと舵を取ることになります。

20世紀は「戦争の世紀」と呼ばれていましたが、当時は「イデオロギー対立」の前の帝国主義のぶつかり合い。それは半世紀後まで遺恨を残して、兵士たちの死の山を築き続けることになります。

21世紀の現在、「イデオロギー対立」は終焉を迎え、経済を背景にした国家主義と発展途上国の民族対立をベースにした地域紛争となりました。

冷静に考えれば、武力兵器など必要はない、冷静に話し合えばわかるという論法もあるのですが、そもそも寄って立つ価値観や倫理観の異なる国同士が簡単に共通の理解を得ることは難しく、外交交渉とはいえ結局は経済力による軍事力を背景にしなければ物事は解決しない。

おそらく世の女性たちからすれば、こんな馬鹿馬鹿しい大人げない論法で夫や息子たちを戦場に行かせるわけには行かないとお思いでしょうが、それが学ばない、進歩しない人類の根本的なありようなのです。

実際の前線で、まさに「消耗品」のように死んでゆく兵士たちを見るにつけ、悲しみや怒りがわいてきて「戦争などこりごり」と思ってしまうのは当たり前の感情です。

国民をそういう「死」に追いやらないためにも、外交力は大切であり、そのための経済力、軍事力は必要なのです。

いつまでも平和ボケしていないで、素っ裸になってしまった老人と子供しかいないこの国の未来を、もう一度議論する必要がありそうです。

かつて半世紀の大戦で失われた多くの命の重さを思いやれば思いやるほど・・・。

さだまさしの主題歌「防人の詩」も有名になりました。

出演:仲代達矢,あおい輝彦,新沼謙治,湯原昌幸,佐藤允,永島敏行,森繁久彌,愛川欽也,夏目雅子,野際陽子,丹波哲郎,三船敏郎松尾嘉代

監督:舛田利雄 1980年

音楽:山本直純

主題曲::さだまさし

BOSS的には・・・★★★★☆☆

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