2012.12.16
Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb 邦題:博士の異常な愛情
米ソ冷戦下における偶発的な核戦争の緊張と恐怖を、皮肉を込めて描いた戦争コメディ。725本目の映画投稿です。
アメリカ戦略空軍基地の司令官リッパー将軍(スターリング・ヘイドン)が精神に異常をきたし、指揮下にあるソ連を囲むように配備されていたB-52爆撃機34機に対してソ連への核攻撃であるR作戦を発令し、そのまま基地に立てこもります。
同盟国として基地に派遣されていた英国空軍のマンドレイク大佐(ピーター・セラーズ)は、将軍とともに彼の執務室に閉じ込められ、彼の説得を試みます。
ペンタゴンの地下にある最高作戦室に集まった軍首脳と政府高官たちは、大統領(ピーター・セラーズ)を中心に激論を交わしていました。タージッドソン将軍(ジョージ・C・スコット)は、時間的猶予のないこと、爆撃機の呼び戻しが不可能なことを訴え、もはやソ連に対して先制攻撃を仕掛けるのが戦後処理において最も有利だと説きます。
軍部の一方的な開戦論に業を煮やした大統領はソ連大使を作戦室に招きいれ、事態の打開を図ろうとします。しかしソ連首相とのホットランインは繋がったものの、ソ連は核攻撃を受けた場合、地球上の生物をすべて皆殺しにする最終兵器が自動起動してしまうことを知らされます。
タイトルだけを見ると、なんだかアダルト作品のようですが、決して誤って借りてきてはいけません。「ピンク・パンサー」などでおなじみの喜劇王ピーター・セラーズと鬼才スタンリー・キューブリックが組んだ社会派喜劇なのです。
本作が製作されたのは1964年、まさに米ソの冷戦が最も深刻な状態の頃でした。そして「もしも」核戦略の鍵を握る人物が精神に異常をきたしたら・・・という、さもありなんな設定の中で物語りは展開してゆきます。
そしてジョージ・C・スコット演じるタージッドソン将軍の軍人的な一方的論法が、実はそれはそれなりに理屈として通っていることに失笑しつつも、現実味を感じて恐ろしくもなります。
それは終盤に登場する主人公ストレンジ博士の今度は科学者としての一方的な論理展開にも繰り返し現れます。
本作ではセラーズが、マンドレイク大佐と大統領、そして終盤に登場する主人公ストレンジラブ博士の1人3役を演じています。
原題どおりの邦題は「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」
原題からすれば、「博士の異常な愛情」とは実は「ストレンジラブ」という博士の名前でした。
本作と「2001年宇宙の旅」(1968年)「時計仕掛けのオレンジ」(1971年)とともにキューブリックの「SF三部作」と呼ばれたりしますが、未来映画という意味ではなく「科学的フィクション」と言う意味では、まさに事実でなくてよかったという、限りなくリアリティのあるフィクションです。
出演:ピーター・セラーズ,ジョージ・C・スコット,スターリング・ヘイドン,スリム・ピケンズ,キーナン・ウィン,ピーター・ブル,トレイシー・リード
監督:スタンリー・キューブリック 1964年
原作:ピーター・ジョージ
BOSS的には・・・★★★★☆
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