2012.12.03
The China Syndrome 邦題:チャイナ・シンドローム
テレビ局の取材を通して、原子力発電のもつ危険性と人間の尊厳を描いたサスペンス・ドラマ。マイケル・ダグラスが製作・出演の社会派ドラマでもあります。721本目の映画投稿です。
ロスの地元テレビ局の人気キャスター、キンバリー(ジェーン・フォンダ)は、軽い取材ばかりではなく本格的な報道キャスターになる野望を抱いていました。
ある日、カメラマンのリチャード(マイケル・ダグラス)と録音係のヘクター(ダニエル・バルデス)をともなって、原子力発電所の取材に出かけます。
制御室の見渡せる場所で取材を始めようとした彼らは、広報担当にカメラ撮影を制止されたその時、突然振動が起こり制御室内は大混乱に陥ります。
何らかの原因で冷却水レベルが低下し、主任技師のジャック(ジャック・レモン)の指示で注水を開始。なんとか無事に原子炉を緊急停止させることに成功しますが、その一部始終をリチャードは負けらに納めていました。
一大スクープと意気込んで局に戻った彼らでしたが、プロデューサーのジヤコビッチ(ピーター・ドーナット)は事実関係が明らかでないことと撮影自体が違法行為であるとの判断から放映を禁止します。
電力会社の思惑から問題はなしとの報告がなされ、数日後に原子炉の運転が再開されることになりますが、原子炉を一番良く知るジャックは疑心暗鬼でした。
タイトルの「チャイナ・シンドローム」とは、炉心溶融で溶け出した放射性物質が地下に浸透し、地球の反対側の中国にまで達すると言うクライシスの意。
昨年の福島原発は、まさに同様の危機に直面したわけですが、本作は今を遡ること30数年前、東海村でわが国第一号の商用発電を開始した14年後の作品です。
根底には、ウランの核分裂という一部の科学技術の進歩だけに頼って、エネルギーとともにさまざまなリスクや問題を内在している原子力発電というものに対する懐疑的な主張があるわけですが、展開はヒューマンドラマとしてエンディングに向かい、いずれにしても最後は人間の判断、正しい判断がすべてなのだと教えてくれます。
アメリカは歴史がない分、工業や経済そしてそれらを資本とする軍事力と「自由主義」の御旗の下に世界を席巻しました。
そんな資本優先主義に対して、時々警鐘を鳴らすこういう映画が作られるというのが、アメリカと言う国の素晴らしさであり「アメリカの良心」だと個人的には思います。
しかし前述の通り最終的にはヒューマンドラマに落としたあたりは、やはりハリウッドも興行成績ありきのきな臭い匂いもしないではありません。
ジャック・レモン、渋い役柄をうまくこなしています。マイケル・ダグラスは、80年代以降のあの汚れ役などまったく思わせない、若くて正義感溢れる演技です。
出演:ジェーン・フォンダ,ジャック・レモン,マイケル・ダグラス,スコット・ブラディ,ジェームズ・ハンプトン,ピーター・ドーナット,ウィルフォード・ブリムリー
監督:ジェームズ・ブリッジス 1979年
製作:マイケル・ダグラス
音楽:スティーブン・ビショップ
BOSS的には・・・★★★☆☆
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