2013.01.09
邦題:壬生義士伝
南部地方盛岡藩の脱藩浪士で新選組隊士となった一人の侍の生き様を描いたフィクション時代小説。730本目の映画投稿です。
江戸時代の終わった明治初期。熱を出した孫を連れて、一人の老人(佐藤浩市)が町医者に駆け込んできます。医者夫婦は、新天地満州に引っ越す準備の真っ最中でした。
待合室で老人の目に留まったのは一枚の写真でした。写真の男は「吉村貫一郎」、老人と同じくかつての新撰組同士でした。
幕末の京都。剣の腕を買われた斎藤一のいる新撰組に、盛岡の南部藩出身の武士、吉村貫一郎(中井貴一)が入隊してきます。柔和な言動とは対照的にその剣さばきは、何人もの人を斬ってきたものでした。
そして金に目のない彼は、隊員たちから「守銭奴」と呼ばれていました。実は吉村は南部藩の下級武士でしたが、家族4人を養うだけの家禄を得ることができず、やむなく脱藩していわば給金稼ぎに新撰組に入ったのでした。
当時の新撰組はその絶頂期にありました。しかし、やがて時代の流れは新撰組にも降りかかってきます。
本作のタイトルは「義士伝」となっていますが、「義士」とは日本では「浪士」と同義語であり、あの「赤穂浪士」と同じであることを意味します。
しかし主人公は「壬生狼」と呼ばれた新撰組の隊員の一人。そして彼の生き様は、ひとつの「武士」の生き様そのものです。
「武士道」の根幹は「忠義」とそのためには己の死をもいとわない潔さ。しかし、葉隠の有名な言葉「武士道とは死ぬこととみつけたり」は、決して短絡的に解釈してはならない言葉であり、武士とは常に生死の狭間に生きながら「何か」のために戦って勝ち続け、生き続けることを求められる過酷な職業、いや生き様なのです。
家族の食い扶持のため、刀を振るって人を切り殺す。奇麗事ではなく、武士とはそもそもそういう職業なのです。
本作はまったくのフィクションです。しかし、誤って伝わりがちな「武士道」の真実の一つの側面を伝える見事な作品です。
出演:中井貴一,佐藤浩市,夏川結衣,中谷美紀,山田辰夫,三宅裕司,塩見三省,野村祐人,堺雅人,斎藤歩,比留間由哲,神田山陽,堀部圭亮
監督:滝田洋二郎 2003年
原作:浅田次郎
BOSS的には・・・★★★☆☆
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