2013.03.09

Movies

The Human Stain 邦題:白いカラス

白い肌の黒人男性と、心に傷を持つ女性との愛と苦悩を描いたヒューマン・ドラマ。米現代文学の大家、フィリップ・ロスのベストセラー「ヒューマン・ステイン」の映画化作品。754本目の映画投稿です。

1998年の米国マサチューセッツ州。運営を徹底的に見直し名門の大学にした学部長のコールマン・シルク(アンソニー・ホプキンス)は、ユダヤ人として初めて古典教授の地位に昇りつめます。

HumanSlide.jpgしかし、何気ない一言が黒人差別だと非難され、怒りのあまり職を辞しますが、そのショックで長年連れ添った妻は心臓発作を起こしこの世を去ります。

半年後。いまだ怒りの収まらないコールマンは、山中の湖畔で隠遁生活を送る作家のネイサン・ザッカーマン(ゲイリー・シニーズ)を訪ね、自分の屈辱のいきさつを本にしてほしいと頼みます。気乗りのしないネイサンでしたが、やがて二人の間には友情が芽生えてゆきます。

1年後。ある日コールマンはネイサンに、恋人の存在を打ち明けます。清掃の仕事をしているォーニア・ファーリー(ニコール・キッドマン)は、義父の虐待やベトナム帰還兵の夫の暴力、そして子供の死という悲惨な過去を背負っていました。

一方のコールマンも、実は白い肌に生まれついた黒人であり、世渡りのためにユダヤ人として生きてきたのでした。

互いに心に深い傷を持つコールマンとフォーニアは、ネイサンの忠告を無視してお互いにのめりこんでゆきます。

冒頭で語られる、ベトナム戦争とテロとの戦いの狭間の時代。不遇の80年代を乗り越えたアメリカでしたが、四半世紀以上を経てもまだ人種差別と東南アジアでの戦の傷を引きずったまま。そして、実話である大統領のセクシャル・スキャンダルが世間をにぎわしています。

本作は、表面的には再び世界のリーダーであるという自信を取り戻した時代を謳歌するそんな楽天的なアメリカの、影の部分を静かにえぐり出した作品です。

主演ののアンソニー・ホプキンス。いい役者さんなのですが、アカデミー賞を受賞した「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクターのキャラが強すぎて、どうもそういう人だという先入観で見てしまいます。

ヒロインの二コール・キッドマンは、トム・クルーズとの私生活の関係がギクシャクし始めた頃でしょうか?だからということではないと思いますが、なかなかの演技です。個人的には、あまり好きな役者さんではないのですが・・・

監督は「俺たちに明日はない」「スーパーマン」「クレイマー・クレイマー」のロバート・ベントン。人の心の微妙なひだや彩をうまく描く監督さんです。

原題は「人のけがれ」という意味。つまり「心のけがれ」ではないわけで、どんなに不遇に生まれ育っても、自分以外のすべての人を偽って生きていても、人としての崇高さは自らの心を決して汚さないこと。

そして純粋な愛は、逆に「穢れなき心」を残酷なまでに求めることをこの作品は伝えてきます。

出演:ニコール・キッドマン,アンソニー・ホプキンス,エド・ハリス,ゲイリー・シニーズ,ウェントワース・ミラー,ジャシンダ・バレット

監督:ロバート・ベントン 2003年

原作:フィリップ・ロス

BOSS的には・・・★★★☆☆

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