2013.05.05
Chaykovskiy 邦題:チャイコフスキー
ロシアの大作曲家チャイコフスキーの半生を描いたソビエト製のドラマ。764本目の映画です。
親友であり、20世紀初頭のロシア音楽界に多大な影響力を持っていたピアニストのルビンシュテイン(V・ストルジェリチク)との確執を生んだ名曲ピアノ協奏曲第一番。
1975年、35歳になったチャイコフスキー(I・スモクトノフスキー)は、この曲で一躍その名を知らしめることになります。
オペラ歌手のデジレ(M・プリセツカヤ)との出会いと激しく燃え上がる恋。二人は婚約までするのですが、チャイコフスキーから創造力をスポイルすることを恐れた彼女が身を引き、二人は決別。彼は失意のどん底に投げ込まれます。
そこからようやく這い上がり、ピアノ協奏曲や「白鳥の湖」などの名曲を次々に生み出してゆきます。
そして1977年、フォン・メック夫人(A・シュラーノワ)との出会い。以降13年間に渡って彼女は、1200通以上に及ぶ文通だけ、決して会いまみえることなく、彼の芸術の最大の理解者として莫大な経済的援助を続けます。
同じ頃、教え子ミリューコワ(R・ユージナ)から一方的でかつ情熱的なプロポーズを受け、二人は電撃的な結婚をします。が、美しいだけがとりえの彼女の言動に、チャイコフスキーの繊細な心は激しく傷つき、ある夜モスクワ川で自殺を図るまで追い込まれてゆきます。
というような彼の半生、名作を生み始めた時代以降の彼を、主にフォン・メック夫人とのプラトニックな恋愛関係を通して描いた作品です。
そしてその頃は「クラシック界三大悪妻」と呼ばれたミリューコワとの出来事と、その葛藤苦悩が昇華された、彼にとってはベートーベンの5番運命交響曲とも言える交響曲第4番が要所要所で流れます。
ちなみに、あとの二人はハイドンの妻マリアとモーツァルトの妻コンスタンツェです。
ただし、1970年のロシアの作品。映像技術やカメラワークといった視点から言えば、当時の邦画よりも出来が悪く、特に女性撮影監督によるカットやシーンは、かなり意味不明な時間を費やしています。
基本的にはロシア人が自らの手によって、英雄チャイコフスキーを好意的に描いたドラマであり、彼の同性愛嗜好については一切触れられていません。
テレビ・ドラマレベルの本作、題材としてはもちろんいいものがありますし、逆に海外から見れば、あのチャイコフスキーのロシアらしさの理由なども深堀りしながら、いい作品になると思うのですが。そうですね、ハリウッドではなくイギリスあたりで・・・
出演:I・スモクトノフスキー,A・シュラーノワ,V・ストルジェリチク,R・ユージナ
監督:イーゴリ・タランキン 1970年
BOSS的には・・・★☆☆☆☆
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