2013.09.17
邦題:クライマーズ・ハイ
1985年の日航ジャンボ機墜落事故の取材に奔走する地元新聞社の記者たちの姿を描いた社会派ドラマ。786本目の映画投稿です。
1985年8月12日、東京発大阪行きの日航ジャンボ機が群馬県御巣鷹山に墜落し、死者520人という大惨事が発生します。
地元群馬の地方新聞社である北関東新聞の遊軍記者である悠木(堤真一)は、社長の白河(山崎努)から事故報道の全権デスクを任されます。
編集局は、さながら戦場の様を呈していました。墜落現場が特定された翌日、県警キャップの佐山(堺雅人)らは現地に入り記事を送ってきますが、編集局内の複雑な人間関係や、編集局と販売局の対立に巻き込まれ、彼の現地レポートはボツになります。
誰も彼もが興奮状態となっている社内。悠木はこの状況が登山における「クライマーズ・ハイ」に近いことを感じます。興奮状態が極限まで達した時こそ、最もミスを犯しやすい。そして彼は、「ダブルチェック」の重要性を再認識します。
同じ頃、悠木の登山仲間で、彼に「クライマーズ・ハイ」の意味を教えてくれた親友の安西(高嶋政宏)は、クモ膜下出血で倒れ植物状態となります。
編集局部長の等々力(遠藤憲一)と悠木の対立も、日に日に深まってゆきます。かつては同じチームで仕事をしていた彼らでしたが、記者としてのプライドと地方紙であることのコンプレックスが、人間関係のねじれを生んでいたのです。
数日後、女性記者の玉置(尾野真千子)は、事故原因に関するスクープのネタを得ます。
あの日、どこで見ていたのかは記憶に無いのですが、ただただ興味本位で映像を追っていたように思いいます。そして、奇跡的に救出された少女の映像。
ただそのことよりも、本作は新聞社の持つ独特の内部の力関係や、地方新聞社の立ち位置などを登場人物たちの言動から鋭く抉り出した作品として、その怒号と疾走感を見事に描いた作品として、とても見ごたえのあるものとなっています。
それは、主人公の登山という自然への挑戦との対比で描かれることにより、人間社会の危うさ脆さなども表現されています。
特筆すべきは脚本で、けなしあいののしりあうその会話は、まさに「現場」のなまなましさを見事に伝えてきます。
自由奔放な社長の存在も、全体が大惨事を取り扱った作品に、ちょっとした華を添えています。
惜しむらくは、エンディングあたりの主人公の言動に、もう少しメッセージ性を持たせて欲しかった。「後は、皆さんそれぞれがお考えください。」の前に、ポンと何かを放り出して欲しかった。
それによっては★5つもあり得た、邦画にしては素晴らしい作品です。
出演:堤真一,堺雅人,小澤征悦,田口トモロヲ,堀部圭亮,マギー,尾野真千子,滝藤賢一,高嶋政宏,山崎努
監督:原田眞人 2008年
脚本:加藤正人,成島出,原田眞人
原作:横山秀夫
BOSS的には・・・★★★★☆
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