2014.02.05
邦題:永遠の0
一人の若者が、太平洋戦争中に特攻で戦死した零戦搭乗員の祖父のことを調べてゆく中で、祖父の真実に近づいてゆく戦争ドラマ。820本目の映画投稿です。
2004年。佐伯健太郎(三浦春馬)は、度重なる司法試験失敗に失意のうちに暮らしていました。
ある日、祖母松乃(井上真央)が他界し葬儀に参列しますが、そこで祖父の賢一郎(夏八木勲)とは血縁がないことを知らされます。
血縁の祖父とは、祖母の最初の夫であり、太平洋戦争中は零戦パイロットとして活躍するも、終戦間際の特攻作戦で戦死した宮部久蔵(岡田准一)だと言うのです。
出版社に勤める姉の慶子(吹石一恵)の誘いで祖父のことを調べ始めた健太郎でしたが、訪問の先々で「海軍一の臆病者」というような祖父の悪評を聞かされます。
一級の操縦の腕を持ちながら、敵と戦うよりも生還を望んだのは、実は妻と娘清子と交わした家族の元に生きて戻るという約束を守るためだった。
しかしそんな祖父が何故、最後に生きる望みのない特攻の道を選んだのか・・・
ご存知、百田尚樹の同名ベストセラー小説の映画化作品。珍しく原作を先に読みました。
原作は柳田邦夫の名著「零戦燃ゆ」をはしょったあらすじ的な下地の上に、感情移入させるための主人公たちを虚構した、結構ブリキ細工的な小説でしたが、一途に生きる久蔵と彼の魂に触れた男たちのドラマ的なところがあって、結構ウルウルさせていただきました。
そして臨んだ映画でしたが、何と言っても岡田准一の零戦搭乗シーンがかっこいい。そして米国に実在する21型のエンジン音を録音してきたと言う栄エンジンの爆音が素晴らしい。素晴らしすぎ。もうこのシーンを2時間ぶっ通しでやってくれても、何一つ文句は言いません。いや、倍の料金払います。
そういうことで、これだけのために私は、きっとDVD買います。
で、空母などの艦船や両軍入り乱れての空中戦などもCGをうまく使ってのなかなかのリアリティ。このあたりは20年前の作品「零戦燃ゆ」のワイヤー吊り模型とは隔世の差があります。
しかしやはりと言いますか、予想通りといいますが、原作どおりといいますか、テーマが曖昧。なので、ドラマとして訴えてくるものはありません。
もちろん、残されて苦労しながら生きる祖母の姿は涙を誘いはしますが、それだからと言って最大の問題が解決されるわけではない。
何故、久蔵は生きて帰ると言う己の思いを貫くのをやめ、特攻を選んだのか・・・
教官として10歳も若い教え子たちが、むざむざと落とされてゆく姿にいたたまれなかったのか、本当に自分が突っ込むことで家族を守れると思ったのか・・・そんなはずはありませんが・・・
戦時下というのは、たとえ銃後だったとしてもさまざまな圧力や時代のうねりの中で、個人が冷静な判断力を保ち続けるのは難しいと思います。
まして前線、弾の飛び交う中では常時正気を持ち得はしないでしょう。だから久蔵にリアリティを見出す戦争体験者もいるようです。
しかしその答えが、精神を病んだ・・・というような曖昧なところで終わらせて欲しくはなかった。
小説や映画がメッセージであるのならば、百田氏の言うように戦争を知らない子供たち、今の若者たちへの遺言ならば、ただの歴史教科書ではないのであれば、批評を恐れず何がしかのメッセージを込めて欲しかったと思います。
一方で著名業界人などによる、「特攻賛美作品」という的外れな左よりの不評もあるようですが、それほどのものでもありません。
いや、そもそもそういうものを本作に求めず、搭乗シーンと爆音に酔いしれている私的には★4つでもいいのですが、邦画としてはまあよく出来ていると言う意味で★3つといたします。
エンディングの主題歌、サザンは論外で意味不明。作曲のギャラは不明ですが、無駄銭でした。2度使いまわした戦闘シーンのCG作って欲しかった。
出演:岡田准一,三浦春馬,井上真央,濱田岳,新井浩文,染谷将太,三浦貴大,上田竜也,吹石一恵,山本學,風吹ジュン,平幹二朗,夏八木勲
監督:山崎貴 2013年
原作:百田尚樹
BOSS的には・・・★★★☆☆
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