2015.03.01
邦題:月光の夏
特攻隊員が出撃前に弾いたという1台のピアノにまつわる戦争秘話を描いたドラマ。862本目の映画投稿です。
かつて小学校の音楽教師をしていた吉岡公子(渡辺美佐子)にとって、捨てられようとしていた鳥栖小学校の古いグランドピアノには忘れえぬ思い出が込められていました。
昭和20年の初夏、当時この小学校のピアノ係をしていた公子(若村麻由美)にもとに、目達原基地から二人の青年特攻隊員が訪れます。生きては帰れぬ特攻出撃を前に、二人はベートーヴェンの「月光」と「海ゆかば」を弾いて基地に戻ってゆきます。
公子が語ったその話が地元のマスコミに取り上げれら、廃棄処分が決まっていた古いピアノが保存されることになります。
地元ラジオ局の石田りえ(石野真子)は、終戦記念日の番組としてこの話をまとめるため、ドキュメンタリー作家の三池安文(山本圭)と共に、かつてそのピアノを弾いた特攻隊員と思われる元少尉、風間森介(仲代達矢)を訪ねますが、風間は記憶にないと口をつぐみます。
特攻隊員たちの取材を進めるうちに、出撃したけれど何らかの理由で目的を達せず帰還してしまった隊員たちを集めた「振武寮」の存在を知った石田と三池。一方、吉岡からの一通の手紙を受け取り、すべてを語る決心をした風間は、当時の出来事を語り始めます。
太平洋戦争末期の特攻隊の若者を描いた作品は色々ありますが、本作は出撃するも機体の不調で引き返した陸軍特攻隊員が、「振武寮」と呼ばれる世間から隔離された施設で過ごさねばならなかったという事実をベースに作られた作品です。
そういう意味で、なかなかデリケートな人物描写が必要で、単にお涙頂戴というわけにはいかず、さすがの仲代達矢が演じきっても、映画表現としてはまだまだといった印象です。
そして、1993年の作品とは思えないほどチープな戦闘機シーンは、実写を織り交ぜることで逆に余計目立ってしまいました。もちろん、笑わないで観てました。
実話を元にしていることでいろいろと制約もあったとは思いますが、制作側が本作で特攻帰還兵の収容施設を明らかにすること以外に、何を目的としているのかがわからないままに物語りはエンディングを迎えます。
監督の神山征二郎はいわゆる正当な社会派監督で、正直請けたテーマが大きすぎた感あり。状況説明などははしょってしまって、登場人物の内面に迫るだけで作ったほうが、訴えるものがあったような気がします。
石野真子、若い・・・。
いや、知覧にいったことのない私が、特攻映画を語る資格はありませんが・・・
出演:渡辺美佐子,若村麻由美,滝田裕介,田中実,仲代達矢,小林哲子,永野典勝,山本圭,石野真子, 内藤武敏,田村高廣,高橋長英,花澤徳衛
監督:神山征二郎 1993年
原作・脚本:毛利恒之
BOSS的には・・・★☆☆☆☆
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