2015.06.10
邦題:鉄道員 ぽっぽや
北海道の雪深い田舎の終着駅を舞台に、鉄道員として生き抜いた1人の男の半生を描いたドラマ。浅田次郎の直木賞受賞作品の映画化。884本目の映画投降です。
雪深い北海道幌舞線の終着駅、幌舞の駅長である佐藤乙松(高倉健)は、鉄道員(ぽっぽや)一筋に人生を送ってきた男でした。
他に駅員のいない1人駅長。そんな彼は、生まれたばかりの愛娘を病院に送る日も、病に倒れた妻が入院する日も、ずっと駅のホームに立ち出発する列車を見送っていました。そして、娘も妻も帰らぬ人となります。
そんな幌舞線も、まもなく廃線になることが決まっていました。それは乙松の定年の年でもありました。
その年の正月、かつて乙松と共に蒸気機関車を走らせた同僚で、今は幌舞よりもずっと大きな美寄駅の駅長を務める杉浦(小林稔侍)が、乙松を訪ねてやってきます。
今年一緒に定年となる彼は、決まっている自分の再就職先であるリゾートホテルへこないかと誘うためでした。しかし、鉄道員一筋の乙松は、自分には鉄道しかないと申し出を受けようとはしません。
酒を酌み交わし、昔話に花を咲かす二人。乙松の脳裏にさまざまな思い出が走馬灯のようによみがえってきます。
そんな時、古い人形を抱えた1人の少女が駅にやってきます。
私事ですが、うちの父も鉄道員でした。といっても父はこの主人公のように機関手から駅長になったわけでなく保線、いわゆる線路工夫から保線の区長まで勤め上げて定年退職しました。決して裕福ではなかったけれど、仕事一筋の父の背中を見て誇らしく思ったものです。
主人公の乙松は、同じく鉄道員だった父の影響を受け、日本の復興のために列車を走らせ続けた生涯でした。そして、幸せ薄くその仕事を次の世代に引き継がせることは出来ませんでした。国鉄からJRへ。石炭から石油へ。そして長く走り続けた鉄路の廃線。
それは昭和と言う時代の終わりであり、戦争で深く傷ついた日本人たちを乗せた幸せ駅行きの蒸気機関車を走らせる旅の終わりなのかもしれません。
JR幹部となり背広をまとった杉浦の息子も、決して父の「ぽっぽや」を引き継いだのではないように。
さりとて悲しい映画ではありません。人は生まれ、いつしか死んでゆく。それはどんなに金持ちになっても成功しても同じ。現実として、いつかは独りで死んでゆきます。
だからこそ、今をどう生きるのか。愛するものの笑顔の隣にいることが、どんなに豊かなことなのか。そういうことを改めて気づかされる作品です。
出演:高倉健,小林稔侍,大竹しのぶ,広末涼子,奈良岡朋子,田中好子,安藤政信,志村けん,吉岡秀隆,山田さくや,平田満,中原理恵,坂東英二,きたろう
監督:降旗康男 1999年
原作:浅田次郎
BOSS的には・・・★★★☆☆
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