2016.03.06
Cross of Iron 邦題:戦争のはらわた
第2次世界大戦下のロシア戦線で繰り広げられた男たちの戦いを描いた戦争ドラマ。912本目の映画投稿です。
1943年のロシア戦線。一時はスターリングラードまで進攻したドイツ軍も、ソ連軍の猛攻に会い敗退を続けていました。その最前線を死守するブラント大佐(ジェームズ・メイソン)の連隊は地獄の日々。兵隊たちにとっては祖国の名誉など皆無の、ただ生きるための戦いの毎日でした。
ある日、新任の中隊長としてストランスキー大尉(マクシミリアン・シェル)が派遣されて来ます。彼は貴族の末裔が故に人一倍名誉欲が強く、ヒトラーから贈られる勲章「鉄十字章」に執念を燃やしていました。
ブラント大佐と副官キーズリー大尉(デイヴィッド・ワーナー)は、この男をみて溜息をつきます。連隊一の戦闘能力を持つスタイナー伍長(ジェームズ・コバーン)とは全く息が合いそうもないからでした。
ソ連軍急襲を退けた翌日、ストランスキーはスタイナーの功績を上申し、彼を軍曹に進級させます。自身が十字章を手に入れる為には、彼を味方にする方が得策だと考えたからでした。しかしスタイナーは、昇進など自分には関係ないと言います。
数日後、再び急襲を受けた部隊は大きな損害を受け、スタイナーも重傷を負って後方の野戦病院に入院します。入院中に鉄十字章を受けた彼は、それを喜ぶどころか慰問にやって来た将軍の尊大な態度に反発します。
そして、担当の看護婦エド(センタ・バーガー)からの愛情を退け、再び前線の友の元へ戻っていきます。
第2次大戦をドイツ側から描いた珍しい作品。そしてロシア戦線と言えばスターリングラードなどの市街戦が多かったのですが、本作は名もない場所での野戦がメインとなっています。
つまり戦いそのものではなく、明日の命を見いだせない男たちのドラマ。
監督はサム・ペキンパー。滅びゆく西部の男たちの悲哀を描く「最後の西部劇監督」が描く、滅びゆく軍人たちの悲哀の物語であり、また多くの映画監督や映画人に影響を与えた「ワイルドバンチ」で確立した「血しぶきと破片、硝煙の飛び散る銃撃描写を、超スローモーションで映し出す」という手法を、本格的戦争映画に持ち込んだ作品でもあります。
邦題の「戦争のはらわた」というオカルティックなタイトルはこの監督をアピールするためにつけられたのでしょうが、B級映画の印象を与えて失敗?原題に従って「落ちた鉄十字」とかでよかったのでは?
独特の映像表現は、そのほとんどが戦闘シーンでありながら後のフィルム・ノワールとも共通する不思議な作品。
コバーンの名演は言うに及ばず、戦争という環境に投げ込まれたさまざまな生まれ育ちの男たちが、何を心に抱き、どうその瞬間を迎えるのか。「戦争は最高のバイオレンスだ」なんていう売らんかなのキャッチコピーには目もくれず、あなた自身の生き様を振り返るきっかけにしてみてください。
男ってやっぱり悲しい生き物であること、その哀愁をリアリティのある戦闘シーンを通して見せてくれる男のための作品です。
出演:ジェームズ・コバーン,マクシミリアン・シェル,ジェームズ・メイソン,センタ・バーガー,デイヴィッド・ワーナー
監督 サム・ペキンパー 1977年
BOSS的には・・・★★★☆☆
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