2017.03.22
SKYFALL 邦題:007 スカイフォール
生誕50周年を迎えた人気スパイ・アクションシリーズ第23作、ダニエル・クレイグ3作目。シリーズ中最も内向きに、ボンドの組織への忠誠心が試される戦いに身を投じます。932本目の映画投稿です。
トルコでの作戦中、MI6の工作員たちが襲われ、各国のテロ組織に侵入しているすべてのNATO工作員の情報が納められたハードディスクが奪われます。ボンド(ダニエル・クレイグ)は、新人の女性エージェントのイヴ(ナオミ・ハリス)と共に実行犯であるフランス人傭兵パトリスを追跡します。
走る列車の屋根でもみ合う二人。Mの指示でイヴの放った銃弾はボンドに当たって、彼は深い渓谷に落下してしまいます。
数か月後。ボンドは公式に死亡が認定され、Mは情報漏えいの責を問われて情報国防委員会の新委員長ガレス・マロリー(レイフ・ファインズ)から引退を勧められます。提案を拒否するM。その直後、Mのコンピューターがハックされます。さらにMI6本部が爆破され、多くの死傷者が出ます。
僻地で秘かに過ごしていたボンドも、世界を駆け巡ったこのニュースを目にしてロンドンに戻ります。古い地下壕を利用したMI6新本部でエージェントとしての復帰テストに臨むボンドでしたが、結果は惨憺たるものでした。復帰に懐疑的なマロリーの意見を一蹴し、Mはボンドの職務復帰を承認します。
ボンドは、自分の肩に残っていた弾丸の破片からパトリスを特定し、新任のQ(ベン・ウィショー)から装備を受け取り、上海へと向かいます。
40年以上の長きにわたり、スパイ・アクションのエンターテインメントとして拡大(?)を続けてきた本シリーズも、ダニエル・クレイグの時代に大きく方向転換を図ります。それまでのファンの反動と制作側の模索の混乱の中で3作目にしてようやく21世紀のボンド像のフォーカスが合ってきた。本作を総括すると、そういうことになるのではないかと思います。
そしてそれは、主人公たちのセリフの中にも、あるいはキャスティングにも表れます。銃の種類によって銃声が異なる、あるいはブローバックの「カチャ」という音が聞こえるといったマニアックなリアリティの追及も、気が付けば・・・ほどのことではありますが、単にマイケル・マンの影響と言うことではなく、新しいボンドを表現するための舞台装置の一つなのかもしれません。
何よりも、指令を受けてヴィランを殺害するというシンプルなプロットから、殺しのライセンスを持ったエージェントが自らの存在意義や組織への忠誠を問う、いわば内向きの表現も増え、ヒューマン・ドラマの要素さえも見せ始めます。本作での、ボンドとMの関係や、ボンドとシルヴァとの対峙などで表現された心的描写は、アクション監督ではないサム・メンデスの真骨頂かもしれません。
拳銃はPPK、ボンドカーはDB5という、原点回帰ともいえる地味な小道具による21世紀の映像は、そっち方面のファンを失っても余りあるドラマとしてひとつのピークを迎えます。
出演:ダニエル・クレイグ,ハビエル・バルデム,ベレニス・マーロウ,ナオミ・ハリス,レイフ・ファインズ,ジュディ・デンチ,ベン・ウィショー
監督:サム・メンデス 2012年
BOSS的には・・・★★★★★
もっとムービー・アーカイブスはこちら >>> 「ムービー・インデックス」